『ボヴァリー夫人』における「青」の表象をめぐる一考察 : エンマと男性たちの関係、風景、身体、道具立てに着目して

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タイトル別名
  • The Study of the Image of "blue" on Madame Bovary
  • ボヴァリー フジン ニ オケル アオ ノ ヒョウショウ オ メグル イチコウサツ エンマ ト ダンセイ タチ ノ カンケイ フウケイ シンタイ ドウグダテ ニ チャクモク シテ

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抄録

本論文は、フランス19世紀の小説家ギュスターヴ・フロベールの『ボヴァリー夫人』を取り上げ、同作品における登場人物の心象世界が、テクストにおける「青」の抽写によってどのように表現されているかを分析し、「青」の持つ役割と意味を解明することを目的としている。なお、本稿では、とくに、登場人物の身体表象、登場人物を取り巻く風景描写や道具立てにおける「青」に着目して考察を行った。主人公であるエンマの心象世界における「青」は、夫のシャルルとの関係においては「嫌悪感」、愛人のロドルフやレオンとの関係においては「幸福感」と結びついており、『ボヴァリー夫人』における色彩描写の「青」は、単に色を表現するだけでなく、テクストの細部に配置され、登場人物の心理状態を表現するためのツールとなり、物語の展開に説得的かつ効果的な役割を果たしている。また、風景や道具立てに付与された「青」は、登場人物によって異なる意味を持つ。たとえば、エンマにとっては「自由」や「幸福」、ロドルフにとっては「規範」と「策略」、レオンにとっては「自由」と「規範」いう二律背反的(アンビバレント)な意味づけである。つまり、フロベールは、物語の展開をストーリーで描いただけでなく、登場人物たちの「青」に対する意味づけの相違によっても表現しているといえるのではないだろうか。

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