初代培養ラット肝細胞系におけるデキストラン硫酸による肝性リパーゼの分泌促進(発表論文抄録(2009))

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抄録

肝性リパーゼ(HTGL)は、血中のカイロミクロンレムナントなどに含まれるトリアシルグリセロールを加水分解する脂質代謝酵素である。本研究では、初代培養肝細胞からのHTGLの分泌に対するデキストラン硫酸(DXS)の効果について検討した。肝細胞と種々の分子量(MW:1.2kDa-10.6kDa)のDXSとを温置すると、HTGLの分泌は分子量7.7kDaのDXSによって最も強く促進された。この7.7kDa DXSによるHTGLの分泌促進作用に対する、チロシンキナーゼ(TK)の関与を検討するため、TK阻害剤を共存させたところ、DXSによる作用は強く抑制された。さらに、DXSによるHTGLの分泌は、アデニル酸シクラーゼ阻害剤及びグアニル酸シクラーゼ阻害剤の共存によっても抑制された。これらの結果から、7.7kDa DXSによって促進された肝細胞からのHTGLの分泌には、TKの活性化に依存しており、さらに細胞内サイクリックアデノシン一リン酸(cAMP)及びサイクリックグアノシン一リン酸(cGMP)の上昇によるタンパク質リン酸化反応の関与が示唆された。そこで、DXSと肝細胞を温置させた際の細胞内cAMP及びcGMP量を測定したところ、それぞれ著しい増加が認められた。また、本DXSによるHTGLの分泌は、cAMP及びcGMP依存性タンパク質リン酸化酵素(PKA及びPKG)阻害剤によっても抑制された。これらの結果から、分子量7.7kDaのDXSによる肝細胞からのHTGLの分泌には、TKの関与とともに細胞内cAMP及びcGMPの上昇と、それに伴うPKA及びPKGの活性化を含む多彩なタンパク質リン酸化反応が重要な一役を担っていることが示唆された。(著者抄録)

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