介護保険制度における費用負担のあり方 : 世代内支援のすすめ

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タイトル別名
  • The way of the expense burden in the public nursing-care insurance system - The advice of the support in the generation
  • カイゴ ホケン セイド ニ オケル ヒヨウ フタン ノ アリカタ : セダイ ナイ シエン ノ ススメ

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抄録

平成12年に施行された介護保険制度は、すでに12年の時を経て現在第5期の事業計画期間に入っている。本制度は社会保険方式を採用するにあたり、高齢者世帯の平均所得額を用いて「高齢者金持ち論」を前提とし、全ての高齢者に相応の負担を求めた。しかし、高齢者の経済的実像は、高齢所得者が少なからず存在する一方で、負担に苦しむ多くの低所得高齢者の存在が明らかとなっている。また、制度発足時の介護保険料基準額は、全国平均で月額3,000円程度であったものが、いまや5,000円を突破し、次期の第6期には6,000円を超える覚悟をしなくてはならない状況にある。  一方、介護保険制度の要介護(支援)認定者数は、平成24年3月末現在、全国で約533万人、その中で介護サービスの利用者数については約440万人を数え、介護サービスにかかる総費用額は、平成22年度で7兆5,550億円となっている。最新の人口推計によると、高齢化はますます進行し、平成23年に2,948万人だった65歳以上の高齢者は、15年後の平成38年には3,657万人になることが予想されている。このうち、介護が必要となる確率の高い75歳以上は1,419万人から2,179万人へと1.5倍に増え、介護保険給費についても21兆円へと急増する見通しである。  しかし、これらの負担を求められる現役世代は、不安定活不透明な経済状況におかれている。特に若者は、高い失業率と非正規雇用の波にのまれている。この介護保険をはじめとして医療費や年金などの社会保障にかかる膨大な費用を、今後だれがどのように負担していくのであろうか。  そもそも、介護保険制度は「高齢者金持ち論」を前提として社会保険方式を採用し、従来の福祉サービスの対象者であった低・中所得者にとどまらず、平等性や普遍性を掲げて高所得者までもほぼ同じ条件の給付対象者として制度設計を行った。その結果として利用者とサービス利用量は増大し、財源不足のために低所得者が負担に苦しむという見逃せない状況が起きている。  制度施行時から10年以上を経た今、改めて低所得者施策の現状を踏まえ、費用負担のあり方について検討する必要がある。本論では、高齢者の経済状況を所得と貯蓄の面から明らかにするとともに、低所得者施策の問題点を整理し、「持てる者が持たざる者」を支援する世代内扶養を中心とした費用負担のあり方について論じていきたい。

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