福祉と所得格差の国際比較― クラスター分析(2)―

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  • フクシ ト ショトク カクサ ノ コクサイ ヒカク : クラスター ブンセキ(2)

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抄録

2000年代の2時点におけるOEDC 諸国の不平等度と貧困度によるいくつかの分類が,吉岡(2014a)において行われた。本稿では1990年代半ばと2000年代末の2時点におけるOEDC 諸国を福祉指標と不平等度によっていくつかにクラスタリングする試みが続けられる。福祉国家を特徴付ける指標として社会支出を用いることにたいするEsping-Andersen(1990,ch.1)の批判はよく知られているが,1990年代半ば以降,先進国における福祉に関するデータの質が向上したことによって,福祉国家を特徴付ける福祉指標として社会支出を用いる研究例は多い。さらに,厚生経済学では不平等を福祉で測る伝統があり,両者は負の相関関係にあるからこの2つの指標を同時に用いて福祉レジームの観点からOEDC30カ国の分類が試みられる。我が国の1990年代半ばは,社会保障給付の総額も給付比(対国民所得)も1980年代から急上昇している時期であり,さらに1970年代から徐々に上昇していた所得不平等度の上昇傾向に拍車がかかった時期でもある。そして2000年代末まで,相対不平等度の上昇傾向3)と社会保障給付の総額および給付比(対国民所得)の上昇傾向は継続している。OEDC 諸国の中には,この間不平等が上昇した国家もあれば低下した国家もある。また,社会支出比(対GDP)が上昇した国家もあれば低下した国家もある。そこで第1節において,社会支出比(対GDP)によるOECD30カ国のクラスタリング結果が1995年と2010年について各国の高齢化率との関連で比較され,第2節においては,ジニ係数によるOECD 諸国のクラスタリング結果が1995年頃と2010年頃について比較される。第3節においては,社会支出比とジニ係数の2次元データによるOECD24カ国 のクラスタリング結果が1995年頃と2010年頃について比較される。第3節まではこの種の研究分野の習慣に従ってOECD 諸国が5つのクラスタに分割され,分析が行われるが,第4節では,比較的よく利用される4つの評価指標によって適切なクラスタ数の候補が探求され,2010年頃のOECD30カ国の2次元データによっていくつかの分類が試みられる。

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