Historical Perceptions and the Consciousness of War Responsibility: Scholarly Interpretations of Modern (Japanese) History in Postwar Japan

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  • 歴史認識と戦争責任意識:戦後日本の近代史研究の軌跡

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抄録

昭和戦前期、すなわち一九三〇年代から四〇年代にかけての日本の侵略行為を、今日の日本人がどのように認識しているのかという、いわゆる日本人の歴史認識について、近年日本内外で問題視されることが多い。本稿では、戦後の日本人が、いわゆる太平洋戦争につながる一九二〇年代から四〇年代(大正後半・昭和戦前期)の歴史過程、すなわち「太平洋戦争への道」(もしくは昭和戦前期の歴史)をどのように理解してきたのかを、日本近現代史を専門とする歴史研究者・学界の動向を含めて明らかにすることにしたい。それはもちろん、日本の近代国家への移行の画期をなす明治維新以降の歴史、つまり日本の近代をいかに理解するのかということにも密接に関係する問題である。

以下、具体的にはつぎの歴史認識・学説に言及することにしたい。

1、共同謀議論(東京裁判史観)。日本の戦争犯罪を裁いた極東国際軍事裁判で検察側が提示した考え。日本の研究者・学界から提示されたものではないが、日本近代史研究の出発点として大きな意味をもつもの。

2、天皇制ファシズム論(講座派的マルクス主義史学)。太平洋戦争前のコミンテルンの日本分析の延長線上に構築された歴史観。戦後の歴史学界、日本近代史研究、歴史教育に大きな影響を与えたもの。

3、十五年戦争論。東京裁判史観が日米戦争中心であったことに対する不満から、日本の中国(アジア)侵略とその責任を明確にすることを目指したもの。とくに満州事変から太平洋戦争までを日本の一連の侵略過程として認識する必要性を強調している。

4、革新派論。天皇制ファシズム論に対するアンチ・テーゼとして登場してきた学説。明治以来の日本の伝統的なアカデミズム史学の延長線上にある。膨大な史料の発掘を進めることによって、従来理論的枠組みを中心にしてきた歴史認識に歴史的事実の重みをもって対抗し、事実上天皇制ファシズム論を衰退に追い込んだ。

主として、以上の歴史認識・学説の検討をとおして、日本人の日本近代史認識と戦争責任の問題について、若干の考察を試みたい。

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