気候変動に関するパリ協定の目標は達成できるのか? ―政府と企業の気候戦略に関するゲーム理論アプローチ―

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  • キコウ ヘンドウ ニ カンスル パリ キョウテイ ノ モクヒョウ ワ タッセイ デキル ノ カ? : セイフ ト キギョウ ノ キコウ センリャク ニ カンスル ゲーム リロン アプローチ
  • Can the Target of the Paris Agreement on Climate Change be achieved? A Game Theory Approach on Climate Strategies of Governments and Corporations

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抄録

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気候変動枠組条約パリ協定では、産業革命前から21世紀中の大気温の上昇が2℃を十分下回り、1.5℃を達成するために努力することが目標となった。この結果今後の大気中に放出可能なCO2の最大量(炭素バジェット)が決まり、これを超える化石燃料の埋蔵量はもはや燃やすことができない「座礁資産」となる見込みである。  本研究の目的は、化石資源を採掘又は利用する企業を対象に、その気候変動リスクの開示の有無と気候変動に対する戦賂の現状を明らかにした上で、企業及び政府がパリ協定の目標を達成する戦略を採用するかどうかについてゲーム理論(戦賂形ゲーム)を用いて分析することである。  本研究の結果は以下の通りである。  気候変動による影響は外部負経済となってCO2を排出する企業には被害が及ばないという前提であれば、企業はCO2の排出削減に取り組まないことが企業の利益に合致した戦略となる。しかし、企業にもある程度の負の影響があると想定すれば、パリ協定の目標達成に自主的に取り組む可能性が生じてくるが、それは不確実である。機関投資家が座礁資産となり得る化石資源を保有する企業を自主的にダイベストする動きはあるが、それだけではパリ協定の目標は達成できない。各国政府が炭素価格を導人すれば、世界がパリ協定の目標を達成することが期待できる。  しかし、途上国は国内の貧困対策との関係から炭素価格の導入が困難な場合がある。このような場合には先進国が途上国に対して資金移転を行うことが有効な方法である。また、1国のパリ協定からの離脱は、当該国の企業にとっては利益となるが、当該国として、また世界全体として不利益となることから、国の政策としては望ましくない。

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