純血・人種混淆・アメリカ : ゴビノーの「諸人種の不平等に関する試論」

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  • ジュンケツ ジンシュコンコウ アメリカ : ゴビノー ノ ショジンシュ ノ フビョウドウ ニ カンスル シロン
  • Purity, Miscegenation, and America : A Study of Gobineu's The Inequality of Human Races

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「レイシズムの父」として名高い、フランス人のジョゼフ・アルテュール・ド・ゴビノー伯爵が執筆した『諸人種の不平等に関する試論』(1853-5)は、一五〇年以上も前に出版された古い本であり、今日の評価では西洋における「科学的レイシズム」の初期の代表例となっている。そのネガティヴなラベルが貼られてからというもの、この本は一般読者に読まれることも研究者に取り上げられることも少なくなっている。だが、それはレイシズムの発展と「人種」の理論化を理解するうえで欠かせない、重要な一次資料でもある。本稿の目的は、ゴビノーのこの本をアメリカの歴史的・文化的コンテクストのなかにおいて、現代の視点から読み直すことであるが、その際に注目したいのが、彼の思想・哲学の中心にあると考えられる「嫌悪と魅惑の法則」なるものである。なによりも興味深い点は、人種混淆にたいする白人の矛盾対立的な心境を見破っているその法則の二面性が、アメリカにおいて無視(もしくは、軽視)されて読まれていた時期があるということである。なぜそのようなことが生じたのか。そして、そのことは、アメリカの人種差別的な社会体制の如何なる一面を暗示しているのか。本稿ではこのような疑問を検討しつつ、ゴビノーの人種理論の問題性と現代性を明らかにしたいと思う。

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