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- 動脈管開存症治療前後における心機能因子の変化について
- ドウミャクカン カイゾンショウ チリョウ ゼンゴ ニ オケル シンキノウ インシ ノ ヘンカ ニ ツイテ
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犬の動脈管開存症(Patent Ductus Arteriosus=PDA)は,我が国における小動物の先天性心疾患としては最も多い疾患であるが,外科的結紮ならびにコイル塞栓術による根治的治療を実施し,術後臨床症状の明らかな改善が認められる症例において,左室内径短縮率(FS)が低下する例が報告されている。本研究はこれまで得られた臨症例を用いて,PDA治療後におけるFS値低下の原因解明を目的に,動脈管閉鎖術前後のFS値および心拍出量(CO)を測定し,FS値の低下と回復の程度に関与する因子について検討を加えた。供試症例の概要および検査方法 2003年4月から2004年4月までの約1年間に,麻布大学獣医学部付属動物病院に来院し,各種検査によりPDAと診断されたイヌ15例を用い治療を実施した。動脈管閉鎖術として7症例にコイル塞栓術を実施し,8症例に対しては開胸術によるジャクソン法を用いて結紮術を行なった。術後の検査方法としては,X線検査は,PDA閉鎖術前,3日後,1週間後ならびに1ヶ月後に実施し,椎骨心臓サイズ(VHS)ならびに心胸郭比(CTR)を用いて評価した。超音波検査では,FS値ならびにCOの測定をPDA閉鎖術前,3日後,1週間後,1ヶ月後で実施した。血圧測定としては,コイル塞栓術を行なったPDA閉鎖直前と直後の動脈血圧を観血的にトランスデュサーにて測定し,その値から体血管抵抗を算出した。成績: 1)心拡大および二次的なMR合併の両者が認められた症例(n=9)の成績 9症例中1例(症例13)を除外した他の全ての例において,術前のVHSが11以上を示し,心拡大が認められた。術前と術後の比較では,全ての症例で術後FS値の低下が認められた。心拡大は術後,徐々に軽減し,また,術後のCOは正常範囲内にあった。2)MRの合併は認められず,軽度心拡大のみが認められた症例(n=2)の成績 : 2例共にVHSが11Vを示し,術前から術後1ヶ月のFS値の変化では,各症例ともにFS値の低下が認められた。しかしながら,COは正常範囲内であった。また,1例(症例8)では術後1ヶ月の時点で12ヶ月齢に達し,他の1例と比較してCOがやや低い結果となったが,12ケ月齢としては正常範囲内であった。3)心拡大およびMRの合併の両者が認められなかった4症例 : 各症例共に術前無徴候であり,PDAの特徴的な心雑音および超音波検査におけるPDAの乱流以外の所見は確認されなかった。術後の超音波検査によりFS値の低下が確認されたが,COは正常範囲内であった。考察 通常心エコー検査において,正常値を下回る低いFS値を示す症例では心不全徴候が認められる。これまでPDAの閉鎖術後にFS値が低下することが報告されている。原因として,心不全の発現があると報告されている【3】。今回の成績から,全症例で認められたFS値の有意な低下が心収縮力の低下に伴うCOの減少を伴うとすれば,同時に臨床症状の悪化が懸念された。しかしながら,術前と比較し,全ての症例において術後,CO値の低下は認められたものの,正常犬のCOより減少する例は確認されなかった。さらに,術後,心不全徴候を示す症例が確認されなかったと同時に,臨床症状の明らかな改善が認められたこと,また全ての症例において心陰影の縮小傾向が認められたことは,術後,FS値の低下からCOが減少しているとは考えられず,十分な心筋機能が維持されていたものと推察された。
Journal
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- Journal of Azabu University
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Journal of Azabu University 11/12 166-170, 2006-03-31
麻布大学
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1050282813006849536
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- NII Article ID
- 110006391433
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- NII Book ID
- AA11561468
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- ISSN
- 13465880
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- NDL BIB ID
- 8678585
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- Text Lang
- ja
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- Article Type
- departmental bulletin paper
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- Data Source
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