手指から分離した細菌に対する植物抽出液の抗菌効果

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  • Antibacterial effects of the plant extracts against bacteria isolated from fingers
  • テサシ カラ ブンリ シタ サイキン ニ タイスル ショクブツ チュウシュツエキ ノ コウキン コウカ

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抄録

植物抽出液の手指用洗浄剤としての可能性を見出すことを目的に、廃棄されることの多いキク葉、フキ葉と、抗菌効果が多く報告されている緑茶を試料として、これら植物抽出液の細菌(手指からの分離菌と食中毒菌)に対する抗菌効果を検討した。 植物抽出液の総ポリフェノール量は、いずれの植物抽出液においても抽出水の温度が高くなる程多くなる傾向にあった。また、手指から分離した細菌は平均して総菌数5.1 × 10² 個(log/ml 2.2 ± 0.2)検出された。グラム陽性球菌では、Staphylococcus 属のS. capitis が18 株、S.warneri が1 株、Aerococcus 属のA. urinae が2 株同定され、グラム陰性桿菌では、Serratia 属のSe. plymuthica が3 株同定された。次に、キク葉、フキ葉、緑茶抽出液を抗菌液とし、手指から分離した細菌(S.capitis 41)、及び食中毒菌の標準株E.coli、S.aureus、S.capitis S に対して抗菌試験を行った。その結果、ディスク拡散法により、E.coli、S.aureus に対して菌の生育を阻止するためには、フキ葉、緑茶ともに総ポリフェノール量が22.0mg/ml 程度は必要であることがわかった。また、S.capitis S に対し、フキ葉は0.44mg/ml、緑茶は0.22mg/ml の総ポリフェノール量が必要であることがわかった。なお、キク葉は、本研究で使用した供試菌株に対して抗菌効果を示さなかった。希釈平板法では、いずれの菌株に対しても、フキ葉、緑茶ともに増殖抑制効果があることが明らかになった。また、S.aureus、.capitis S に対して、フキ葉は0.47mg/ml、緑茶は1.0mg/ml 以上で、完全に細菌増殖を抑制できることが明らかになった。一方、ATP 拭き取り検査法により、フキ葉、緑茶の洗浄・消毒効果を検討した結果、ともに飲用濃度、10%濃度で基準値1500RLU を下回った。 以上の結果から、フキ葉、緑茶は、飲用濃度抽出液で手指の洗浄剤として活用可能であることが示唆された。しかし、緑茶では正確なATP 測定が難しいため、ATP 拭き取り検査法以外の細菌培養法などの衛生検査を併用する必要があるといえる。

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