集団ロールシャッハテストにおけるよくうつの特徴

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タイトル別名
  • The Characteristices of Depression on Large Scale Rorshach Test
  • シュウダン ロールシャッハ テスト ニ オケル ヨク ウツ ノ トクチョウ
  • シュウダン ロールシャッハテスト ニオイケル ヨクウツ ノ トクチョウ

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抄録

1.否定的な感情のひとつであるよくうつ感に関する研究として,質問紙法を用いた方法や臨床症状からの検討はかなり行われてきたが、投影法からの検討はほとんど手をつけられていない状況である。そこで投影法を用いての検討が考えられたが,投影法は,一つの指標の解釈仮説がいく通りもあることから分かるように実験的に用いるには難しいものがある。そこで今回は,投影法でありながら,実施方法等から質問紙法に近くなっている集団ロールシャッハテストを,本格的な投影法による研究への橋渡し的な方法として使用することにした。2.よくうつ感の特徴を検討するために,集団ロールシャッハテストにおいて最も詳細に,かつ臨床的にみることが可能な適応について主に検討することにした。3.集団ロールシャッハテストには,大きく分けて自出記述式と多枝選択法があるが,ここではMunroeによって始められた多枝選択法を日本に取り入れた高橋らの方法を使った。4.対象は男女大学生102名。男子40名,女子62名。平均年齢は18.6歳。よくうつの程度を測るテストとしてSDS(自己評価式抑うつ性尺度),その特徴をみるテストとして集団ロ.テストを使用した。5.よくうつ得点の高低と集団ロ.テスト平均スコアとの関連で目についだのは,SDSのトータル,主感情,心理的随伴症状であり,よくうつ感が大きいとK13,つまり不適応反応が多く適応がよくないことを,またK3,つまり良形態反応が少なく,現実検討力が低いことが判明した。6.よくうつ得点の高低と集団ロ.テストスコアの比では,SDSのトータル,主感情,心理的随伴症状の要因で関連が認められた。SDSのトータルではよくうつ感が小さいとK1がK3+K4より少く,情緒的な適応を指向しているが,主感情では別の結果となった。また,よくうつ感が中程度に大きいものは,主感情においてK2がK3+K4より多く,情緒的な適応より平板な適応を指向する傾向がみられたが,心理的随伴症状では必ずしもあてはまらなかった。また,主感情,心理的随伴症状ともよくうつ感が小さいと,K3がK4より多い,つまり急な情緒的な反応を出しにくく,情緒の統制は崩れにくいことが示された。7.これらの諸結果に基づいて,よくうつ感情について,SDSの主感情と心理的随伴症状の関連,及び集団ロ.テストの知的な適応と情緒的な適応,更に適応の善し悪しという側面から同じ否定的な感情である不安倍も含めて検討を加えた。8.よくうつ感についての次の課題として,最初にふれたように,ロールシャッハテストなどの投影法からの,しかも臨床的な症例をも含めた検討があげられよう。

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KJ00000723363

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