神経内分泌分化を示す胃充実型癌の臨床病理学的研究

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タイトル別名
  • Clinicopathological Study of Gastric Solid-type Carcinomas Showing Neuroendocrine Differentiation
  • シンケイ ナイブンピツ ブンカ オ シメス イジュウジツガタガン ノ リンショウ ビョウリガクテキ ケンキュウ

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抄録

論文(Article)

【目的】 内分泌細胞癌は早期より転移を来たし、予後不良といわれている。しかし、神経内分泌マーカーの検索が行われていない場合には単に低分化充実型腺癌と診断されている症例も多い。本研究では低分化充実型腺癌と診断された症例の中にどの程度内分泌細胞癌が含まれているかを調べたうえで、内分泌細胞癌と通常型低分化充実型腺癌との間の臨床病理学的な差異を明らかにする。さらに予後不良因子の1つと推測されているメラノーマ関連遺伝子(MAGE)とこれらの腫瘍との関係を明らかにすることも目的とする。 【材料と方法】 1451例の外科的切除胃癌中、腫瘍が主として低分化充実型腺癌の像を呈した85例を研究材料とした。通常染色および免疫染色を含む特殊染色により神経内分泌分化を示す内分泌細胞癌群を選び出し、それとリンパ性間質を伴う癌および肝様腺癌を除いた通常型低分化充実型腺癌とを多面的に比較した。MAGE蛋白の発現の有無は免疫染色によって調べた。 【結果】 神経内分泌マーカー陽性を示す内分泌細胞癌群は、通常型低分化充実型腺癌と診断されていた63例中22例(35.0%)に含まれていた。5年生存率をみると内分泌細胞癌群が通常型低分化充実型腺癌に比べて予後不良な傾向にあったが、有意差までは認められなかった。しかしながら、MAGE陽性となった内分泌細胞癌群 (8例) はMAGE陰性内分泌細胞癌群(10例)、MAGE陰性通常型低分化充実型腺癌 (17例) に比べて有意に予後不良であった(p=0.004)。内分泌細胞癌群が上・中・下部どの部位にも著差なく発生していたのに対し、通常型低分化充実型腺癌は下部発生が有意に多かった (p= 0.013) ことを除き、他の主な臨床病理学的所見には有意な差は認められなかった。 【結論】 HE染色のみで低分化充実型腺癌と診断された例の中で内分泌細胞癌群が占める割合は予想外に多く、充実性増殖を示す腫瘍には神経内分泌マーカーの検索は不可欠である。内分泌細胞癌群の中でMAGE陽性のものは、MAGE陰性の内分泌細胞癌群、 MAGE陰性の通常型低分化充実型腺癌と比べて予後不良であり、内分泌細胞癌群の診断には、同時にMAGEに関する情報が重要と考られる。

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