ナシの黒星病の伝染と防除に関する研究(4) : 休眠期および鱗片脱落直前時の殺菌剤散布効果

説明

ナシ黒星病の第一次伝染源は芽鱗片上病斑であることを明らかにしたが,さらに第一次伝染を防ぐための有効な薬剤と防除時期を明らかにしようとした。1 クロン加用石灰硫黄合剤は,薬剤が直接分生胞子に接した場合に強い殺菌力を示すが,休眠期の芽の内部までは効果が認められなかった。2 病鱗片上ではしだいに緑色鱗片上に分生胞子を形成してくるので,薬剤処理によって緑色鱗片上への分生胞子の形成抑制効果をみた結果,12種の薬剤中ベンレートは最もすぐれた効果でついでNF-44,同48に効果が認められた,他の薬剤はほとんど効果がなかった。3 ほ場における,ベンレート500倍による休眠期の散布回数試験を行った結果,芽鱗片上病斑から新梢基部への菌糸の侵入を送らせ,または一部阻止し,新梢基部病斑を小さくし,散布回数の多いほど形成する分生胞子に発芽力のない奇形胞子を生じさせ,第一次伝染による葉の初発生を遅らせ,かつ病葉上の病斑点を減少させた。4 鱗片脱落直前散布試験の結果は,ベンレート,NF-56ともすぐれた効果で,いずれも新梢基部病斑の拡大を抑制し,発芽力のない奇形胞子を形成し,第一次伝染による葉の発病を少なくし,病葉上の病斑数を減少させた。5 ベンレート500倍による休眠期散布と鱗片脱落直前散布の防除を比較すれば,後者の1回散布は前者の3回散布の効果よりすぐれた。従って後者の1回散布で十分な効果とみられるが,両者の各1回散布はさらにすぐれるであろう。

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