圃場整備水田における水需要構造

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  • ホジョウ セイビ スイデン ニ オケル ミズ ジュヨウ コウゾウ

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抄録

水田の他地目への転用(工場・宅地化,畑転など)により水稲作付面積が減少しているが,用水量はそれにみあって減少していない. それは,水田用水量のなかで,消費水量以外の水量,すなわち栽培管理用水量と配水管理用水量の占める割合が大きいためと考えられる. 本研究では,農区レベルでの水需要と上記の管理用水量の実態を明らかにするため,特別な水管理が行われる田植,中子し期と普通期に分けて,用排水量を中心とした現地観測を行った. 以下その結果の概要を述べる. (1)調査対象地区の減水深は小さく,実測値は蒸発計蒸発量より若干大きい程度である(Table2). すなわち,蒸発散主導型の水消費が行われている. (2)代かき時には,140~150 mmの用水量を必要とした. (3)田植時に,稚苗機械植えのための強制落水量73 mm(S56)が観測された. (4)中干し時の強制落水量は70mm,中干し終了直後の取水量は4日間に154 mm(S56)であった. 中干し復元用水量の集中は代かき用水量に匹敵する. (5)中干しにともなう浸透量の増加は総量で120~130 mm(S56)に達することがわかった. 浸透速度は取水開始後の経過時間のベキ乗に比例して減少した(Fig. 5). (6)幹線用水路から小用水路への取水量管理が十分でなく,配水管理用水量(小用水路レベル)はかなり大きな値を示した(Figs. 2,3). 無降雨が続くと,配水管理用水率は減少する. 昭和56年8月中旬~下旬の例では,50%前後から10%程度まで減少した(Fig. 3). (7)取水量優先利用,降雨量優先利用という2つの方法で,水田落水量から栽培管理用水量と無効雨量を求めた. 昭和56年の田植期,中干し期,減水深測定時を除く50日間の総量で,水田取水量+有効雨量に対する栽培管理用水量の割合(栽培管理用水率)は取水量優先利用の方法で33.4%,降雨量優先利用の方法で37.6%になった. すなわち,利用可能水量の約1/3が掛流しもしくは強制落水量となっていることがわかった(Table 4). 水田作付面積が減して余剰水が生じても,投下労働力の減少により管理用水量が増加して,結果として用水量の減少に結びつかないのではなかろうかと推論される。

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