農企業による有機農産物の生産・流通の取り組みと課題 : フィリピン企業の事例分析

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タイトル別名
  • Subjects of Production and Marketing of Organic Farm Products by Agribusiness Farm : A Case Study of a Philippine Firm
  • ノウキギョウ ニ ヨル ユウキ ノウサンブツ ノ セイサン リュウツウ ノ トリクミ ト カダイ フィリピン キギョウ ノ ジレイ ブンセキ

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抄録

本論文は、東南アジア地域における有機農業を支える担い手として企業経営もしくは家族経営のいずれか中心になるかという問題意識のもとて、研究蓄積がほとんどない農企業による有機農産物の生産・流通の実態と課題の解明を、フィリピンのマニラ近郊でレタス、ハーブ、コーヒー、茶の有機栽培とその販売に先駆的に取り組んでいる株式会社GOURMET FARMS INC(GF)の事例分析に基づいて試みたものである。一つの農企業の事例分析という限界はあるが、以下のような生産・流通の実態と課題が明らかになった。 (1)GFでは年間6~9回もレタスを連作するため、輪作体系の導入、モミガラ鶏糞の大量投入、コーヒーパルプなどの副産物の有効利用による地力維持が最大の課題である。また、生産拡大のためには、周辺の契約農場でのレタス生産を増加して需要に適応した生産量を確保しながら、自社農場での輪作体系を徐々に拡張していくという方法が有効である。 (2)マーケティングによる経営の拡大と安定化を図るための方法としては、次の3つが特に重要であることが明らかになった。a)直営レストランによる消費の拡大、b)品質管理システムの確立による顧客の確保、c)製品多様化によるスーパーマーケットでの有機野菜専用の販売コーナーの確保。 病害虫の発生に好適な条件下にある東南アジア地域では、零細で資本力や技術水準が低く、しかも有効な販売手段をもたない家族経営が、有機農産物の生産・流通に成功するためには様々な困難を抱えている。GFの分析結果から見る限り、東南アジア地域では技術力・資金力・販売能力を備えた農企業による有機農産物の自社生産さらには周辺農家との契約生産が、有機農業の拡大と持続に有効であることが示唆された。

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