肥育豚へのパン屑利用低リジンの飼料給与による筋肉脂肪含量の増加

Abstract

現在、食品残さは重要な飼料資源と認識されており、食品残さを給与して肉質を改善する研究が、多くの研究機関で実施されている。近年、食品残さであるパン屑を肥育豚飼料へ添加することによって、豚の胸最長筋における筋内脂肪含量(IMF)が増加することが報告されているが、その作用機作については検討されていない。飼料にパン屑を添加した場合、その原料である小麦のアミノ酸組成を反映し、結果的に、いくつかのアミノ酸が要求量を満たさなくなると予想される。そして、そのことがIMF増加の一因だと推察された。そこで、パン屑を添加した飼料におけるアミノ酸濃度とIMFとの関係について検討した。トウモロコシとダイズ粕を主原料とする対照飼料に対して、パン屑を添加したパン屑添加飼料(BS飼料;日本飼養標準によるリジン要求量に対して充足率約70%)、パン屑添加飼料では不足するアミノ酸(リジン、メチオニン、トレオニンおよびトリプトファン)を添加したパン屑+アミノ酸添加飼料(BS+AA飼料)を調整した。飼養試験にはランドレース種去勢豚と雌豚合計24頭を供試した。それぞれの飼料に去勢雄4頭、雌4頭を配置し、体重40kgから110kgまで各飼料を不断給餌した。飼養試験終了後と畜し、枝肉の品質を調査するとともに、胸最長筋のIMF含量を調査した。その結果、BS飼料の給与は背脂肪厚に明確な影響を及ぼさなかった。一方、BS飼料を給与した豚の胸最長筋のIMF含量は他の2区に比較して高くなった(BS区とBS+AA区間;P<0.05、BS区と対照区間;P=0.0515、対照区2.29%、BS+AA区1.98%に対し、BS区3.52%)。BS+AA飼料を給与した肥育豚の1日平均増体重、飼料摂取量、飼料要求率、背脂肪厚およびわき腹の脂肪厚は対照飼料を給与した肥育豚のそれらと同等であった。以上の結果は、これまで報告されてきたパン屑添加飼料を給与した肥育豚における胸最長筋のIMF含量増加が、パン屑添加に伴う一部のアミノ酸含量の低下に由来することを示唆している。

Journal

Details 詳細情報について

Report a problem

Back to top