国指定天然記念物「スイゼンジノリ発生地」の現状およびその保護対策

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熊本平野は、地下に自然の巨大な貯水タンクを備えた水の都であり、規模的には「日本一の地下水都市」とも言える。阿蘇西麓の台地などに降った雨が地中にしみ込み、スイゼンジノリの生育に必要な、カルシウムなどのミネラル分を多く含んだ地下水を育んできた。熊本市を中心に周辺約100万人の生活用水をほぼ100%地下水で賄っている。その都市部のほぼ中心に水前寺、江津湖があり、熊本水環境のシンボルともいえる国指定天然記念物「スイゼンジノリ発生地」をかかえている。昭和28年の熊本大水害により、一時、絶滅したのではないかとも言われたスイゼンジノリが、昭和41年、13年ぶりに、復活が確認され、1990年代前半には、「スイゼンジノリ発生地」内において、大繁殖していた。しかし、湧水量の減少や水質の悪化などにより、1996年・秋以降、スイゼンジノリは急激に減少し、現在ほぼ壊滅に近い状況にある。熊本水環境のシンボルであり、江戸時代からの食の伝統産物であるスイゼンジノリが、今まさに、発生地から消え去ろうとしている。しかし、筆者らの研究により、生育環境さえ整えば、約2週間で2倍に増殖する能力を持っている。日本国有種であるスイゼンジノリを絶滅から復活へと導く保護対策は、熊本の水環境、否、日本の水環境のためにも必要であると考える。

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