フキの交雑による品種育成とその栽培技術開発に関する研究

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抄録

本論文は、これまで困難とされてきたフキの交雑による品種育成および慣行の地下茎分割繁殖法に代わる効率的な栄養繁殖法と寒冷地における新作型の開発について研究したものであり、その成果を要約すると以下のとおりである。フローサイトメトリーによる相対的な核DNA量の測定により、二倍体品種の存在を明らかにした。花穂(フキノトウ)収穫用品種を育成するには、雄株より苞が開きにくいなど品質面で優れる雌株から選抜した方が有利であった。二倍体である群馬県在来‘水ブキ’(雌株)と‘八ツ頭’(雄株)との交雑実生から、花穂の収量性と品質において優れる国内初の交雑種‘春いぶき’(雌株)を育成した(農林水産省種苗登録第15405号)。これまで三倍体品種を用いた交雑による実生の作出は困難とされてきたが、‘愛知早生ブキ’など三倍体の3品種の雌株に、二倍体の群馬県在来‘水ブキ’(雄株)を交配すると、一部の種子は登熟期に達して稔実種子が得られた。‘愛知早生ブキ’(雌株)と群馬県在来‘水ブキ’(雄株)の交雑実生の中から選抜した‘AM-1’は、早生性で、葉柄部のアントシアニンの発生が少なく、収量も多い育種目標に適した系統であった。フキの根ざし繁殖法における不定芽の萌芽率には品種間差がみられ、根ざし繁殖に向く品種(‘春いぶき’、‘吉備路’、‘八ツ頭’)と向かない品種(‘愛知早生ブキ’、群馬県在来‘水ブキ’)に分類された。また、萌芽には季節変化があることが明らかとなった。育苗箱を用いた根ざし繁殖法により、‘春いぶき’と‘吉備路’で慣行法の地下茎分割繁殖法の6.8倍、‘八ツ頭’では同13.3倍の高い増殖倍率となった。春に種株を植え付けて根株の養成を行い、降雪前の12月に根株を掘り取った1年生株を冷蔵し、これを翌年に出庫し、ガラス室内の温床に伏せ込む促成栽培により、積雪時の1、2月においても花穂を安定生産でき、さらに困難とされてきた3月に葉柄も生産できた。

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