福岡県カキ流通におけるノロウイルスによる風評被害の影響

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抄録

2006年秋期から2007年冬期にかけて全国的にノロウイルスによる感染性胃腸炎が流行し、カキの風評被害が発生した。2006年に発生した本県におけるカキの風評被害の影響範囲や回復状況を把握して状況を分析し、今後の風評被害対策についての検討を行った。消費者の不買行動として説明されるカキ小屋の販売額の減少については1月下旬まで、カキの宅配の発送数の低下については2月末まで、中間流通業者のリスク回避行動として説明されるカキ市場価格の低下については3月末まで続いていた。消費者の不買行動としての風評被害の影響は1月下旬で少なくなったが、宅配は贈答用の性格が強く、安全性の点から消費者に敬遠されたため、1月下旬以降も風評被害の影響が残ったと考えられる。一方、市場価格はマスコミの報道が沈静化した後も回復せずに低水準で推移しており、中間流通業者のリスク回避行動が長期化したことが伺える。従って、本県におけるカキの販売形態はカキ小屋など消費者への直接販売が中心となっているため、風評被害が発生した際の対策としては、消費者の不買行動の軽減に焦点を当てて対策を行うことがより効果的であると考えられる。そのためには、いかに消費者が食品の安全に対する知識をより正確に、より早く理解してもらうかが重要となる。行政機関においては率先して迅速に行動して情報発信に努め、食の安全に対し正確な情報を早く消費者へ伝えることが必要であり、また、漁業者サイドにおいては消費者や関連業者と日頃から揺るぎない信頼関係を築き、風評被害が発生した場合でも食品の安全に対しての正しい知識を消費者に容易に理解してもらえるような取り組みを行っていくことが必要であろう。

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