伊勢湾におけるイカナゴの新規加入量決定機構に関する研究

書誌事項

タイトル別名
  • イセワン ニ オケル イカナゴ ノ シンキ カニュウリョウ ケッテイ キコウ ニ カンスル ケンキュウ

この論文をさがす

抄録

本研究で伊勢湾のイカナゴを対象に野外調査,飼育実験および数値解析に基づいて,本種の生態的特性を明らかにするとともに,親魚の再生産力,初期減耗の双方から新規加入量決定の司能性を検証し,その機構を実証的に解明することを試みた。1. 伊勢湾におけるイカナゴの生態的特性 伊勢湾のイカナゴは各生活史段階において,外部環境の変化に対し、生残確率や繁殖の機会を高めるための種々の適応的生態をもつことが明らかとなった。1)本種は他のイカナゴ属魚類とは異なり、卵内発生時聞が約11日間と短いこと, 同一受精日の卵群は特定の1日に集中的にふ化することが明らかとなった。こうしたふ化過程および野外におけるふ化仔魚の出現動向から,本種の産卵盛期は12月下旬~1 月上旬と推定された。2)飼育実験によって,本種はふ化後24時間以内に内部栄養を大量に残した状態で摂餌を開始すること,外部栄養の摂取に伴って内部栄養の消費は抑制され,ふ化後1ヶ月にわたって内外の栄養源を混合して利用できることが明らかとなった。3)冬季の伊勢湾は, イカナゴ仔稚魚が卓越する単純な仔稚魚相を示した。本種は前述した発生初期の栄養摂取戦略によって餌生物の密度は低いが競合種の少ない冬季に発生し、その海域の餌料生産力を独占的に利用できることが示唆された。4)伊勢湾産イカナゴの夏眠期間は, 低層水温が21℃前後に達する6~7 月から14℃を下回る12月頃までの約半年間に及ぶ。本種は夏眠期間中全く摂餌せず, 夏眠期後半の11月頃から成熟を開始する。栄養蓄積不良で夏眠開始までに4.2以上の肥満度が確保できないと成熟しない。さらに,成熟不能に陥る前段階として,餌不足に対し体成長を抑制して栄養蓄積を優先させ,生理的上限水温に達するまで夏眠開始を遅らせて栄養蓄積を行うなど, 夏眠開始までに成熟可能な4.2以上の肥満度を達成するための多様な応答を見せる。5)卵巣組織の観察から.イカナゴは部分同時発生型の成熟様式を示し同期して発達した卵母細胞を1産卵期に1回産卵することがわかった。性成熟の進行は水温降下に強く依存し雌の場合, 卵黄形成の開始は20℃付近への水温低下が,排卵による最終成熟期への移行は11℃付近への水温低下が引き金になる推察された。(以下略)

収録刊行物

被引用文献 (2)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ