スギ雄性不稔個体の育種と早期育成法の開発

抄録

林業面からの長期的スギ花粉症対策として、平成15年に西会津町のスギ造林地で発見された雄性不稔スギ「福島不稔1号」を用いて、精英樹との交配により、新たな雄性不稔スギの作出を試みた。新たな雄性不稔スギの作出にあたっては、福島不稔1号及び福島不稔2号の雄性不稔形質の遺伝様式と他の雄性不稔スギとの雄性不稔遺伝子の相同性について確認し、富山不稔1号と同じ遺伝子支配により雄性不稔形質が発現していることが分かった。この結果を受けて、福島不稔1号F1系統と富山不稔1号F1系統の交配により得たF2集団から、新たな雄性不稔個体を選抜した。また、短期的対策として、スギ黒点病菌(Leptosphaerulina japonica)の胞子飛散時期を暴露試験により推定し、自然条件下で感染が発生していると推定される時期に、付着法や散布法による人工接種試験を試み、散布法については接種時期、接種回数、接種源の種類、大豆油濃度、クローンによる枯死率の違いについて検討した。これらの試験の結果、L.japonica の人工接種によりスギ雄花を枯死に至らしめることが可能であり、接種適期は11月で、接種回数は1回で十分なこと、接種源としてはL.japonicaを2週間米ぬか・ふすま培地で培養した菌糸粒をグラインダーで破砕し、破砕した菌糸体に0.003%Tween20と10%大豆油を加えた懸濁液が有効であると思われ、また、雄花あるいは花粉の形態の違い等のクローンによる何らかの相違が雄花枯死率に影響を及ぼしていることが示唆された。さらに、小型の挿し穂を用いた挿し木において、穂木サイズと発根促進剤濃度、挿し床の深さ、採穂台木への施肥と発根率や発根の状態について検討し、穂木サイズやIBA水溶液濃度は発根率や根の状態と関わりが認められなかったが、深さの深いポットを用い、採穂台木への適正な施肥を行うことで、発根率を高める効果のあることが分かった。

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