水産資源管理における個体成長モデルに起因するリスクの分析

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タイトル別名
  • A risk assessment concerning model selections of somatic growth in stock management
  • スイサン シゲン カンリ ニ オケル コタイ セイチョウ モデル ニ キイン スル リスク ノ ブンセキ

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説明

個体成長は,資源評価において最も基本的な分析項目である。von Bertalanffyモデル(VBモデル)は高い汎用性を持つ,広く適用可能な個体成長モデルとして知られる。VBモデルでは,繁殖動態は考慮されておらず,成熟後の個体成長の遅延が適切に定量化できない場合がある。バイオマスの変化をモデル化し,生物学的管理基準(BRP)としての最適漁獲圧を決定する場合,成長動態の誤推定は,不適切なBRPを導く。このことは誤った資源管理によるリスクの発生を暗示している。VBモデルの二相型(Biphasic)は,成熟後の個体成長の遅延を捉える事ができ,そのためBRPは従来のVBモデルのものと異なる値になる。本研究では,従来のVBモデルと二相型VBモデルによる成長分析を行い,それぞれのモデルの統計的な妥当性を比較する。次に両モデルを前提とするバイオマス動態を計算し,BRPとしての最適漁獲圧を算出する。モデルの妥当性と最適漁獲圧の値を分析・評価し資源管理における,モデルの誤推定,BRPの推定の偏り,さらに管理におけるリスクの可能性について,総合的に考察した。過去の研究の4つの事例を再評価した結果,従来のVBモデルを使った場合,最適漁獲圧の決定において,過大推定が生じた。最適漁獲圧の過大推定の原因として,バイオマス重心年齢の過小推定が挙げられる。資源動態モデルにおける特性値の過大・過小推定は,生物測定データの不確実性や標本数の不足から生じるバイアスとして,とらえる必要がある。

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