ギ酸エチル及び二酸化炭素混合ガスくん蒸の青果物(バナナ、パイナップル、イチゴ、カボチャ、グレープフルーツ、ミカン及びその他野菜類)に対する品質影響

書誌事項

タイトル別名
  • Influence of Gas Mixture Fumigation of Ethyl Formate and Carbon Dioxide on Several Characteristics of Fresh Fruits and Vegetables (Bananas, Pineapples, Strawberries, Grapefruits, Satsuma mandarins, Squashes, and Other Vegetables)

この論文をさがす

抄録

1.新規薬剤であるギ酸エチルによる青果物の品質に対する影響を調査するため、フィリピン産のバナナ及びパイナップル、佐賀県産イチゴ(品種:さちのか)、南アフリカ共和国産グレープフルーツ、愛媛県産ミカン及び鹿児島県産西洋カボチャ(品種:くりゆたか)を用いて、ギ酸エチル75.2mg/l及び二酸化炭素374.9mg/lの混合ガス(ギ酸エチル[16.7%]+二酸化炭素[83.3%], w/w)、15℃、3時間のくん蒸条件でくん蒸し、重量(kg)、糖度(Brix%)、硬度(kg)、果実色(3段階評価又は、L値a*値b*値)、食味(3点識別法)についての影響を比較した。また、茎葉野菜類として、沖縄県産未成熟インゲン、茨城県産パセリ及び香川県産ブロッコリーについて、上記くん蒸条件のギ酸エチル及び二酸化炭素混合ガスのくん蒸で障害が発生するかどうか予備的な調査を実施した。2.その結果、ギ酸エチルのガス濃度は、品目の表面積が大きい場合に低下する傾向を示し、ガス収着において、吸着の影響が吸収より大きいと考えられた。バナナ、パイナップル、イチゴ及び西洋カボチャでは、重量、硬度、果実色、糖度及び食味について、バナナの果皮色と西洋カボチャの食味を除いて、無処理区とくん蒸区の差異は認められなかった。3. バナナの果皮色の調査では、くん蒸区の果実でギ酸エチルを投薬した投薬孔に面した果皮には、やけ症状が認められる場合があったが、原因として、液体でギ酸エチルを投薬したため、気化が不十分なギ酸エチル飛沫がバナナ片面に暴露したことが考えられた。しかしながら、実際の商業くん蒸では、ギ酸エチルと二酸化炭素の混合製剤による気化投薬が実施されるため、バナナ果皮の障害を低減又は回避できる可能性があると考えられる。また、ギ酸エチルくん蒸がバナナの追熟を阻害することは認められなかった。4. 西洋カボチャでは、食味試験で処理区と無処理区には有意差が認められたが、それは処理区の食味が低下したということではなく、多くの食味試験パネリストは処理区の食味が良好とコメントしており、原因として、供試した西洋カボチャのサイズが大きかったため、障害試験に供試する果実数が限られ、個体差が評価されてしまったものと考えられた。5. グレープフルーツとミカンでは、重量、硬度、L*a*b*色空間による果実色、糖度及び食味について、くん蒸7日後では、処理区のミカンがやや軟化する傾向を示したものの、無処理区とくん蒸区の間に差異は認められなかった。6. 茎葉野菜類では、パセリとブロッコリーをくん蒸した場合のギ酸エチル濃度は、未成熟インゲンの場合と比較して、くん蒸直後から大きく低下し、また、それらの重量はくん蒸後7日間で大きく減少した。さらに、パセリの処理区では、色の変化及びしおれ、強いパセリ臭及び表面の湿潤化が確認され、食味が対照区に比較して有意に劣化した。一方、ブロッコリー及び未成熟インゲンでは、無処理区と比べてなんら外観等に遜色がなく、食味も無処理区と差がなかった。7. 結論として、ギ酸エチルと二酸化炭素の混合くん蒸は、生果実類にはほとんど問題なく適用できると考えられ、野菜類も種類によっては、カボチャのように適用できると考えられた。しかしながら、茎葉野菜類では、ブロッコリーは問題ないが、パセリでは品質に与える影響が大きかったため、その使用には注意が必要であり、食品加工できる野菜など、適用できる品目が限られると考えられた。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ