酪農経営における法人化と資金調達の意義(1)

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  • ラクノウ ケイエイ ニ オケル ホウジンカ ト シキン チョウタツ ノ イギ(1)

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農業分野に流動化を周知する目的で,酪農のケースを用いて,法人化と資金調達,そして,特定資産の信用力で資金を調達するアセットファイナスを検討する。会社法による法人が資金調達の基本となる主体であるが,全農家に占める会社法法人はわずかに過ぎず,資金調達に関する自己の裁量,経営管理,さらに産地・産業の供給力を考えると,一定数の法人は必要である。酪農経営体を法人化する目的は,労働力,負債,収益性という経営課題の解決にある。この経営課題の解決は,酪農経営体が単独で取り組むこともまたは生乳産地という地域経営体で克服することもでき,この点にこそ酪農産業の優位性がある。酪農経営体の成長は,次の2項が成長する組織に合わせて適切に備わっていることである。(1)整備された生産情報を前提に会計情報管理の構築 (2)(1)を活用できる組織運営体制の確立 そして,事業の成長には資金が必要である。資金調達は需要側と供給側の要求の一致で成立する。会社法法人の資金調達は内部と外部の調達がある。前者は利益を積み立てた残余利益からの調達であるのに対して,後者は証券発行の自己資本と借入の他人資本による調達である。会社法法人の事業活動を,資金視点で捉えると,どのように調達してどのように運営したかであるが,経営視点で捉えると,調達費用に対して運営利益はどうであったかが問われる。経営として,調達費用を上回る運営利益を実現しなければ,事業は継続しない。したがって,ある水準の経営では自己資本と他人資本の政策が必要になる。さて,酪農の経営体の資金調達は内部と外部調達共に可能なことが特長であるが,他の農業では外部調達のみが選択の対象となる。酪農の経営体の成長に伴う資金調達には,法人は必須の要素になるが,通常,農業では,法人化すると地域リーダーたる農協との経済的関係が悪化する傾向にあるが,酪農は法人化がそのような結果に直結するわけではない。法人の信用力による資金調達には,法人化とその会計情報管理構築とそれを活かす組織運営力が不可欠である。特定資産の信用力による調達は,個人法人共に均等に調達機会を提供することから酪農産業において,特に優位な資金調達手段に発展する可能性が高い。

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