播磨灘北西部における魚卵・仔稚魚の出現状況

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タイトル別名
  • Occurrence and distribution of fish eggs, larvae and juveniles in the northwestern part of Harima-nada
  • ハリマナダ ホクセイブ ニ オケル ギョラン ・ シチギョ ノ シュツゲン ジョウキョウ

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抄録

1.播磨灘北西部における魚卵,仔稚魚の出現状況を明らかにするため,2010年5月から'11年4月の間に毎月1回,13定点で稚魚ネットの表層水平曳網,7定点でプランクトンネットの垂直曳網調査を実施した。2.調査海域は浅海で河口域を有するため,最大で4~31℃の水温の季節変動と4~32の塩分格差が生じるなど,低塩分化しやすい環境特性を示していた。3.表層曳網により採集された魚卵について,種類組成の上位はサッパ16.9%,ネズッポ科11.7%,コノシロ6.6%,ササウシノシタ亜目2.6%,カタクチイワシ2.5%,仔稚魚ではハゼ科16.1%,カサゴ14.6%,コノシロ10.4%,イカナゴ9.0%,サッパ8.8%と内湾性の多獲性魚や漁獲対象種以外が上位を占めた。4.魚卵数は4~8月に増加,9~12月に減少し,1~3月にはほとんど皆無となる三期に分けられた。仔稚魚も卵の動向に準じたが,冬季に粘着卵を産む種や胎生種が優占するため,卵ほどの季節格差はみられなかった。5.有用種では,冬・春季はメバル属,イカナゴ,春・夏季はコノシロ,クロダイ,夏・秋季はサッパ,シロギス,秋・冬季はスズキ属,キチヌ,半年以上の長期にはカタクチイワシ,カサゴ,ウシノシタ科の卵稚仔が出現した。これらの魚種は概ね,それぞれの産卵場で産卵し,浮性卵や仔魚の発育段階で同海域のほぼ全域に浮遊,拡散し,後期仔魚期から稚魚期に接岸回遊して,児島湾内河口域の干潟や沿岸の藻場等に着底するものと考えられた。6表層と全層における組成を比較検討するため実施した垂直曳網では,卵はカタクチイワシ,仔稚魚ではハゼ科が約半数を占め卓越するなど表層曳網との差異が一部みられた。今後,卵稚仔の定量にあたっては採集方法を再検討する必要がある。7.近年の環境変化が卵稚仔出現に及ぼす影響を評価するため,10~50年前の表層曳網調査結果と今回の組成を比較検討し,北方系のアイナメ属が減少する傾向がみられた。

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