Fe2+によるポリ-γ-グルタミン酸の解重合機構

書誌事項

タイトル別名
  • Depolymerization of poly-gamma-glutamic acid by Fesup(2+) and its mechanism

抄録

活性酸素によるポリ-γ-グルタミン酸(PGA)の解重合反応を研究するために,アガロース電気泳動を用いる簡便な方法を開発した。この方法を用いてPGAはHO・ラジカルを発生するフェントン系(Fe2+ + H2O2)だけでなく,Fe2+単独でも解重合されることを見いだしたので,その機構について検討した。PGAにFe2+を加えると,自動酸化による速やかな酸素吸収が生じたが,H2O2の蓄積は認められなかった。一方,カタラーゼがFe2+による解重合を完全に阻害したことから,H2O2の関与が示され,Fe2+のみによるPGAの解重合でもフェントン反応で生じるHO・ラジカルが作用分子種であることが示唆された。Fe2+(aqo)に比べてFe2+ -PGA複合体は速やかに自動酸化することから酸素吸収を指標にしてFe2+ -PGA複合体の化学量論的組成比を測定した結果,Fe2+とPGA中のγ-グルタミン酸残基との比は1:4であった。また,Fe2+ -PGA複合体の自動酸化の速度定数とFe2+存在下でのPGAの解重合の速度定数はそれぞれ0.003min-1であり,両者は等しかった。このことはFe2+の自動酸化がPGAの解重合反応の律速段階であることを示している。アスコルビン酸をフェントン系に添加すると微量のFe2+でも解重合が生じたが,Fe2+のみによる解重合には影響しなかった。このことから,フェントン系ではバルクのH2O2によってFe2+はFe3+に酸化されてしまう為,還元剤の効果が生じるが,Fe2+のみの場合はPGAに配位したFe2+部位で自動酸化によるH2O2が生成し,さらに,近傍に存在するFe2+とのフェントン反応でHO・ラジカルが生じ,これがPGAの鎖切断をおこなう為,還元剤の効果は無いと推測した。以上のことから,我々はPGAのFe2+による解重合機構として,PGAに配位したFe2+の自動酸化による局所的HO・ラジカル生成モデル,すなわち局所的に高濃度で存在するFe2+とH2O2によるフェントン反応を提唱する。またPGAはFe2+に配位することによってFe2+を安全に酸化し,Fe2+の害作用から細胞を防御する生理作用を有することが示唆された。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ