サロマ湖における貧酸素水塊の消長と底層水中の化学種について

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タイトル別名
  • Interaction of chemical species between the anoxic hypolimnion and the substrate in the water column at Lake Saroma, Hokkaido
  • サロマコ ニ オケル ヒンサンソスイカイ ノ ショウチョウ ト テイソウ スイチュウ ノ カガクシュ ニ ツイテ

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抄録

本研究では、夏期に湖底で貧酸素水塊の消長が認められるサロマ湖を対象に、この貧酸素水塊の消長と底層水中の栄養塩類や硫化物濃度との関係について2003年~2005年に調査を実施し、下記の結果を得た。(1) 2003年、2004年に実施した貧酸素水塊の変遷に関する調査結果から、両年とも7月下旬以降、気温上昇に伴い湖心部の湖底で酸素濃度が低下し始め、9月上旬に貧酸素水塊が最も広範囲となり、9月中旬に気温低下と吹送流により、貧酸素水塊は解消した。(2) 溶存酸素と栄養塩の関係をみると、溶存酸素がおおよそ6mg/l以下で栄養塩類の濃度増加が始まり、2mg/l以下で幾何級数的な濃度増加が観測された。(3) 貧酸素水塊の発達に伴う硫化水素発生に関する調査から、2005年7月下旬に湖央部において、湖底から1cmで400μg/l.S2-、5cmで300μg/l.S2-と著しい硫化水素の発生が示され、また湖底水中の鉛直方向の硫化物濃度勾配は著しく大きかった。これらの結果より、本湖では貧酸素水塊が初夏に湖底で発生し、初秋に気温低下と吹送流により消滅するまでの間、湖底からの栄養塩類の溶脱や硫化物の発生を促していることが示され、サロマ湖の富栄養化の原因や底質環境に関する新たな知見や底棲生物の生息環境を含めた湖生態系の再生にとって貴重な情報が得られた。

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