北海道において堆肥の施用下で3年間リン,カリウムを無施肥とした場合の作物収量および土壌理化学性への影響

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  • Effects of three years of continuous no P and no K fertilization under manure application on crop yields and soil chemical properties in northern Japan, Hokkaido

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北海道網走地域は北日本の最も重要な農業地帯の1つである。長期にわたる施肥によって同地域のほとんどの農耕地土壌には過剰に蓄積した可給態リン,カリウムが認められる。さらに,この地域では3年間に1回,およそ30Mg ha-1の堆肥の施用によって,リンとカリウムが約450kg P2O5ha-1,780kg K2Oha-1程度投入されている。この蓄積したリンおよびカリウムを利用し,リンとカリウムの減肥が可能であるかどうか評価するため,圃場試験を行った。テンサイ,バレイショ,コムギおよびオオムギを用いたこの地域内の典型的な輪作体系の中で栽培した。その際施肥条件として,i) 慣行NPK施肥,ii) リン半量施肥; iii) 無リン施肥; iv) 無リン,無カリ施肥をそれぞれ設けた。試験圃場として,黒ボク土圃場2圃場(Urashibetsu A,B),灰色台地土圃場2圃場(Yasaka A,B)の4圃場を使用した。試験開始前(2008年)に堆肥30Mg ha-1をUrashibetsu AおよびYasaka A圃場に施用した。Urashibetsu BおよびYasaka B圃場については,2007年と2010年に同様に堆肥30Mg ha-1が施用されており,特にUrashibetsu B圃場には,2010年に緑肥としてエンバクが栽培され,鋤きこまれている。これら圃場において作物の収量,土壌中可給態リン酸,交換性カリウム含量及び形態別リン酸(Al型P,Fe型P,Ca型P)を測定した。結果として,3年間の試験においてリンおよびカリウム無施肥による収量への影響はほとんど認められなかった。堆肥の施用により,3年間のリン,カリウム無施肥処理においても土壌の可給態リン酸,交換性カリウム含量の減少は認められなかった。堆肥の施用はまた,Urashibetsu AおよびYasaka A圃場においてCa型Pの増加およびFe型Pの減少をもたらした。以上の結果は堆肥の施用が有機体リンの供給源としてのみならず本来不可給態であるFe型Pの可給化によって土壌の可給態リンを増加させたことを示唆した。これらの結果から,リンおよびカリウムの減肥あるいは無施肥は堆肥の施用後に行うことが望ましいと考えられた。

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