赤外線サーモグラフィによる鶏の体温測定に関する基礎的研究

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タイトル別名
  • Fundamental study on measuring chicken body temperature using infrared thermography
  • セキガイセン サーモグラフィ ニ ヨル ニワトリ ノ タイオン ソクテイ ニ カンスル キソテキ ケンキュウ

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抄録

養鶏産業の生産効率の向上や感染性疾患の蔓延を防ぐため,赤外線サーモグラフィにより病鶏を摘発するシステムを構築する上での基礎データを得ることを目的に,正常鶏と病鶏の直腸と体表の体温測定および病理組織学的検索を行った。健常な16週齢の採卵鶏(実験1),高度病原性伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(vvIBDV)を接種した4週齢の採卵鶏(実験2)およびvvIBDVを接種した9週齢のブロイラー(実験3)について,動物用水銀体温計による直腸体温と赤外線サーモグラフィによる体表体温を測定した。体表体温は頭部,脚部,体幹部の3カ所について測定し,部位別に最高体温を記録した。いずれの鶏も実験終了後剖検し,肉眼的および病理組織学的に検索した。実験1の直腸体温は41.8~42.5℃,頭部,脚部,体幹部の体表体温はそれぞれ38.4~40.8℃,35.0~40.8℃,31.6~35.4℃であった。実験2,3の感染実験では,直腸体温の上昇は最高43.6℃と軽微なものであったが,低下は最低36.1℃と重度のものがみられた。実験2では接種2日目に体温上昇を示しその後急激に体温低下を示す個体で死亡する傾向がみられ,23羽中7羽が死亡したが,実験3では死亡例は認められなかった。直腸体温の低下に併せて,頭部と体幹の体表体温の低下傾向がみられたが,脚部に有意な変化は認められなかった。実験2と比較し実験3における直腸体温の変動は軽微なものであり,体表体温に有意な変化は見られなかった。全実験を通じ,脚部の体表体温は他の箇所と比較し直腸体温と同様の変化を示すことは少なく,体温変動の推定には適さないと考えられた。一方,実験2において直腸体温と体表体温の相関係数は頭部: 0.351,体幹: 0.235,脚部: -0.171となり,頭部および体幹で直腸体温の変動を推定できる可能性が示唆された。以上より,赤外線サーモグラフィで頭部および体幹の体表体温を測定し,対照群と比較することで直腸体温の変化は検出できる可能性が示唆された。

収録刊行物

  • 鶏病研究会報

    鶏病研究会報 52 (1), 42-51, 2016-05

    つくば : 鶏病研究会

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