暑熱環境下における黒毛和種去勢牛へのグリセロール給与効果の検討

書誌事項

タイトル別名
  • Effect of feeding glycerol in the Japanese black steers under hot environment
  • ショネツ カンキョウ カ ニ オケル クロゲワシュ キョセイギュウ エ ノ グリセロール キュウヨ コウカ ノ ケントウ

この論文をさがす

説明

黒毛和種去勢牛における暑熱環境下でのエネルギー摂取不足を解消するため、グリセロールの給与効果の検討を行った。試験1は、予備試験としてホルスタイン種乾乳牛3頭を用い、グリセロールの最適給与量の検討を行った。試験2では黒毛和種去勢育成牛8頭を、また試験3では同肥育牛を用い、暑熱期および寒冷期の飼養試験(各8週間)と消化試験を実施し、グリセロールの給与効果を検討した。試験1で、暑熱期にグリセロールを添加しない区(無添加区)、乾物(DM)中5%添加する区(5%区)および10%添加する区(10%区)を設定し、ラテン方格法による消化試験を実施した結果、消化率に差は認められず、グリセロールを10%まで添加できることを確認した。試験2暑熱期の結果では、10%区の平均乾物飼料摂取量(DMI)、日増体量(DG)は無添加区に比べそれぞれ0.57kg/日、0.20kg/日高く、飼料要求率、1kg増体に要する可消化養分総量(TDN)は1.25、1.02kg低くなり、グリセロールの添加により飼料効率が向上することを確認した。揮発性脂肪酸(VFA)組成は、10%区で全期間を通して酢酸が低く(P<0.01)、酢酸とプロピオン酸の比率(A/P比)が試験開始2週以降から低い値を示した(2,4週:P<0.01、6,8週:P<0.05)。また、n-酪酸は1、2、6および8週で高かった(P<0.01)。消化率およびTDN含量に有意な差は認められなかった。試験2寒冷期の結果では、飼料効率の向上は認められず、VFAは試験1と同様の動きを示した。消化率およびTDN含量に有意な差は認められなかった。試験3暑熱期の結果では、消化試験時における体重減少が影響し、10%区で飼料効率の低下が認められた。しかし、寒冷期においては飼料効率に差は認められなかった。以上の結果から、グリセロールの利用により、とうもろこしの約10%代替(DM中)が可能であることが示唆された。また、黒毛和種育成牛において、暑熱期にグリセロールをDM中10%添加することにより、飼料効率およびDGがよく、夏季の乾物摂取量低下による増体鈍化の解消の手段となる可能性が示唆された。しかし、肥育牛においてグリセロール給与効果が確認できなかったことから、今後の検証が必要である。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ