新興国におけるGood Agricultural Practice認定者の農薬取扱い方法と健康被害に関する研究 : タイ,ナコンサワン県を事例として

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  • Pesticides usage behavior and health impact of Thai's farmers under good agricultural practices system

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抄録

農作業者の知識の不足に起因する農薬の誤使用による健康被害が,世界の中所得国を中心とした国々から報告されている。Good Agricultural Practice(GAP)の認証の普及が農作業者の農薬の取り扱いに関する知識の向上に寄与し,農薬による中毒の削減や農作業者の健康を守ることが期待されている。その効果を評価するため,タイにおいてQ-GAPの認証を得ている農家に対して農薬の扱い方や,中毒症状の有無,GAP取得後の農薬に対する考え方や知識の変化等に関して聞き取り調査を行った。調査は2014年の12月に実施し,ナコンサワン県の農家33人を対象とした。農薬の取り扱いに関する知識を問う検査の結果,GAP取得者と未取得者の間に有意な点数の差は確認されなかった。また,全調査対象者の75.8%が農薬の散布時には常に防護装備を身に付けると回答していたのに関わらず,GAP取得者の36.4%,未取得者の40%が何等かの健康障害があると同答しており2集団の割合に有意な差は認められなかった。特に空間識失調性のめまいや,呼吸器系の障害の報告が顕著であったが,これは国によっては使用が禁じられているような毒性の強い農薬が使用されていたこと,農薬散布時の眼部の保護が不十分であることによると推察した。本調査ではGAPが農業者の健康の保護に及ぼす影響は薄く,Q-GAPの危険物質の取り扱い規制の脆弱さが確認された。この課題に対しては,農産物の海外輸出を促進することにより,他国の農薬規制に合致する新しい基準の形成を推進することが有効であると考えられる。合わせて適切な防護装備に対する農業者のアクセスを改善することも重要である。

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