『世界の歌』における闇と光の交錯

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タイトル別名
  • Intersection of the darkness and the light in The Song of the World
  • セカイ ノ ウタ ニ オケル ヤミ ト ヒカリ ノ コウサク

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抄録

『世界の歌』は晩秋から冬を経て初春にいたるあいだに失踪した息子を父親が探し出し家に連れ帰るという物語であるが,重要な場面の多くは夜の闇のなかで展開する。その闇のなかでは当然のことながら松明やランプなどの光が揺れ動く。また,登場人物においても人間の闇を象徴する身体的欠陥を持った人物が幾人かあらわれるが,彼らは単なる弱者ではなく普通の人間たちが感じとることのできないことを知覚する能力に恵まれていたりする。勿論のことながら若さや力にみち溢れた人間の内部にもさまざまな闇の部分(欠点)が潜んでいる。 この物語においては動植物や自然界のさまざまな現象も人間たちが繰り広げるドラマと密接な関わりを持ったものとして描写される。人間のドラマも自然界のなかのひとつの現象でしかない。上流の村と下流の村を結び付けている河もまた大きな意味を担っている。その河の周辺の自然界と人間界の闇と光の交錯から立ちのぼってくるのが「世界の歌」なのである。

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