「日本的経営」の歴史的形成に関する議論の変遷 : 歴史把握と現状認識の関係

書誌事項

タイトル別名
  • 「ニホンテキ ケイエイ」 ノ レキシテキ ケイセイ ニ カンスル ギロン ノ ヘンセン : レキシ ハアク ト ゲンジョウ ニンシキ ノ カンケイ
  • "Nihonteki keiei" no rekishiteki keisei ni kansuru giron no hensen : rekishi haaku to genjo ninshiki no kankei
  • The transition of arguments on the historical formation of "Japanese management" : an interrelation between the understanding of history and current knowledge

この論文をさがす

説明

type:text

本稿は, 「日本的経営」の歴史的形成に関する議論とそれらの背景にあった現在的問題意識の変遷について検討する。  1950年代末から60年代初めにかけて, アベグレンなどの外国人研究者による日本の経営・労使関係研究の翻訳・紹介に刺激を受けて, 日本でも「日本的経営」を対象とした研究が登場した。アベグレンが「日本的経営」の起源に関して前工業化期の日本の社会組織からの「連続」を強調したのに対して, 日本人研究者たちは, 主に19世紀と20世紀の「断絶」を主張した。両者の見解の相違を生んだのは, 当時の日本の経営・経済に対するそれぞれの問題関心の違いであった。アベグレンが, 日本を他の後発工業国のモデルとして認識していたのに対し, 日本人研究者たちは, 戦後の経営および労使関係の民主化という問題意識をもっていた。  1970年代中頃から80年代にかけて, 経営史, 経営学, 経済学などの諸分野で「日本的経営」を主題とする研究が目立ってきた。それらは, 「日本的経営」の形成を環境適応的・経済合理的な経営行動の結果と見なす視点において共通性が認められた。その背景には, 石油危機後における日本の経済大国化, 日本企業の良好なパフォーマンスと, それらを受けて海外で巻き起こった「日本異質論」に対する反発があったと推測できる。  1990年代中頃以降, 「日本的経営」の形成時期に関しては, 「第一次対戦前後期説」「戦時期説」「1950年代説」「1960年代説」など, 諸説が並立する状況になっている。それぞれの説の背景には, 日本の経営・経済の現状, とくにバブル崩壊後の日本経済・企業の不振の原因探求と政策提言という問題意識があった。  このように, 各論者の歴史把握と現状認識の間には強い結びつきが認められる。

工藤教和教授退任記念号 論文

収録刊行物

  • 三田商学研究

    三田商学研究 54 (5), 129-146, 2011-12

    慶應義塾大学出版会

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ