資本主義における自立の論理と不均衡(3) : 労働価値説の意味(スミス価値論再考)

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タイトル別名
  • The Capitalistic Logic of Self-Sustainment and the Disequilibrium (3) : The Meaning of Labour Theory of Value : Rethinking of Adam Smith's Value Theory
  • シホン シュギ ニ オケル ジリツ ノ ロンリ ト フキンコウ 3 ロウドウ カチセツ ノ イミ スミス カチロン サイコウ

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抄録

生産価格を「資本家的理念」とすることに対して問われるのは, それと社会的再生産との関係である。そのためには先ず, 価値法則の必然性把握が問われるが, それについては, 論証手続きに難点を残したマルクスに比べて, アダム・スミスの方が巧みであった。 いわゆるスミスの支配労働価値説は, 無階級社会での等労働量交換が, 階級社会では成立しないことを示す。これは, 従来の学説史評価と異なり, 経験的証拠に欠ける等労働量交換を回避しつつ, 労働と価値とを強く関連付けるものであり, 労働力再生産の見地からの労働価値説であったといえる。この点で, スミスの理論的貢献は大きい。 しかしスミスは, 商品は労働生産物であるとしながら, それと購買力という価値概念との関係を明確にしなかった。他方, マルクスは, 価値を労働凝固性にみることで, 剰余価値の根拠を解明した。購買力と労働凝固性は, 相容れないものではない。購買力は, 商品交換が労働交換であることに基づいており, 社会的再生産を維持する労働配分を実現する。そして, 社会的再生産の維持は剰余を含めた等労働量交換を必然としないのである。(未完)

収録刊行物

  • 經濟學研究

    經濟學研究 60 (3), 1-13, 2010-12-09

    北海道大学大学院経済学研究科

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