移民子弟の周辺化と教育的公正 : 栃木・群馬両県の事例から

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タイトル別名
  • Marginalization of Immigrant Children and Educational Equity : A Case Study of Tochigi and Gunma
  • イミン シテイ ノ シュウヘンカ ト キョウイクテキ コウセイ : トチギ ・ グンマ リョウ ケン ノ ジレイ カラ

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抄録

近年グローバル化する日本社会において,移民の子どもをめぐる教育問題 が顕在化している。そこでは,彼/彼女らが周辺化―不就学・不登校・学業 不達成―される実態がある。では,移民子弟はどのように周辺化されている のか。また,それはなぜか。さらに「日本の教育」は,どのような教育的公 正を実現すべきか。 筆者は2010年に栃木県真岡市で,2012年に同市と群馬県伊勢崎市で調査 を行った。調査対象は,真岡市の公立小中学校,国際交流協会,教育委員会, NPO法人「SAKU・ら」,伊勢崎市のNPO多言語教育研究所ICS(InternationalCommunitySchool) である。調査方法は主に半構造化面接調査と参与 観察である。 まず,周辺化の実態には大きく二つ考えられる。即ち,「親の周辺化」と「子 の周辺化」である。さらに,前者は「地域」「学校」において,後者は「学校」 「教育機会」「家庭」という空間で周辺化されている。 次に,周辺化の原因は大きく3つ考えられる。第一に,積極的ラベリング と消極的ラベリングというラベリング論からのアプローチである。第二に, 移民子弟や教員の使用言語をめぐる,言語コード論的アプローチだ。第三に, 就学段階における必須要素の欠如である。移民子弟の就学には,学校に「接 触」し,学校生活に「適応」,最後に「継続」して学校に通い続けるという3 段階が存在し,各段階で言語資本や社会関係資本などの不足がキーとなる。 最後に,移民子弟を考慮した教育的公正が必要である。「公正」とは,「平 等」の十分条件と解釈され,日本における多文化共生や多文化教育の重要な 概念である。移民子弟の教育的公正に関しては,各就学段階における公正を 実現すべきである。即ち「接触」段階では言語や文化的背景に着目した「象 徴的公正」,「適応」段階においては学習資源や人間関係を中心とする「資源 的公正」,「継続(移行)」段階では進級や進学制度における「制度的公正」の 達成が望まれる。

収録刊行物

  • 研究論集

    研究論集 13 531-551, 2013-12-20

    北海道大学大学院文学研究科

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