オトガイ部の知覚鈍麻を初発症状とした多発性骨髄腫の1例

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説明

患者は78歳,女性.2011年12月に右オトガイ部の知覚鈍麻を自覚し,2012年1月に近医脳神経外科を受診した.中枢神経には異常を認めず,抗てんかん薬などを処方され,経過観察となった.5月頃より知覚鈍麻の範囲が拡大し,7月に病院歯科口腔外科を受診した.パノラマX線写真で右下顎骨に境界不明瞭の骨吸収像,CT,MRIで右下顎皮質骨の網目状吸収と骨髄内に均一に造影される軟組織病変を認め,悪性腫瘍が疑われ当科を受診した.  初診時の口腔外所見では,顔貌は左右対称.右オトガイ部に知覚鈍麻を認めた.口腔内に明らかな潰瘍,びらん等は認めず,表面粘膜は正常で,圧痛も認めなかった.PET-CT検査で,右下顎骨にSUVmax8.8の集積亢進を認め,胸骨柄,左肩甲骨,右上腕骨,仙骨,左大腿骨にも集積を認めた.臨床検査所見では,貧血や腎機能障害を認めず,軽度の血清カルシウムと血清アルブミンの低下,CRPの上昇を認めた.また,免疫グロブリンはIg-Aが高く,遊離L鎖はκ型が高値を示した.血清免疫電気泳動では,M蛋白(IgA-κ型)を認めたが,尿中B-Jタンパクは陰性であった.右下顎骨から生検を行い,形質細胞腫の診断を得,最終的に多発性骨髄腫(IgA-κ型)と診断した.  血液内科に対診したが,神経障害以外の症状がないことと患者の希望もあり,無治療で経過観察を行っていた. 腫瘍の増大なく経過していたが,2013年7月に貧血,腎機能障害が出現しVMP療法(bortezomib, melphalan, predonisolone)を行い,1コースで症状は改善した.現在,BD療法(bortezomib, dexamethasone)を継続し,良好に経過している.

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