プラトンの『饗宴』におけるエロスとそのものの認識についての考察─知識人の人間観ならびに社会観(6)─
書誌事項
- タイトル別名
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- Studies on Eros and Nature of Thing in Platonʼs『Συμπό σιον』─High-Brow Views with Human Nature and Social Relationship (6)─
説明
本稿では,プラトン(Πλάτων, Plátōn)(前427 年-前347 年)の『饗宴』を通して,個別のものの観察から始め,ことの本質(ものの本性)を見極める認識論について考察する。すなわち,彼は,個別・具体的な美しいものから美そのもの(すなわち,美の本性,あるいは美の本質)を認識する手順について考察している。この手順は,プラトンの『饗宴』において示された,愛することから認識することに到る手順として与えられる。本稿では,個別・具体的な美しい肉体から美そのものの認識に到るための手順が考察される。それは,個別・具体的な肉体的美しさを求める者(愛する者)は, (1)はじめに,この世(地上)の個々の美しいものに心を引かれる(愛する),つまりある人の顔や手とかその他肉体(身体)に属するものの美しさにひかれ, (2)次に,最高美を目指し,梯子の階段を昇るように,絶えず高く昇っていく,すなわち,一つ一つの美しい肉体的な美しさから二つへ,二つからあらゆる美しき肉体(身体)へと進み,そして,あらゆる肉体(身体)の美が同一不二であると看取し,一人に対する熱烈な情熱が取るに足らぬものと見て,その熱を冷まし,その愛をあらゆる肉体(身体)に及ぼし, (3)そして,美しき肉体(身体)から美しき心霊に進み,肉体的美しさより心霊上の美しさに高い価値を置き, (4)その上で,美しき職業活動へと進み,たとえば,最高で最美な国家と家の統制に関することへと進み, (5)美しさ(エロス)を語るには,美しさの真実を究める必要があるので,美しき職業活動から美しき学問に進み,その学問から美そのものの学問に到達し, (6)最終的には,美のそのもの(美の本質)を認識する。 ここに到って美そのものを觀得する(認識する)ことになる。プラトンは,肉体的な愛欲者から愛智者に到って,ものの本性・本質を見極めることができると言う。また,そこにおいて人生は生き甲斐があると言う。プラトンの『饗宴』において,肉体的な愛欲者が,愛智者となり,美そのものを(ものの本性)認識することに到ることを,本稿では考察する。
収録刊行物
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- 札幌学院大学経済論集
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札幌学院大学経済論集 (15), 73-103, 2019-11-30
札幌学院大学総合研究所
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1050282814044602496
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- NII論文ID
- 120006771305
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- ISSN
- 18848974
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- HANDLE
- 10742/00003241
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- 本文言語コード
- ja
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- 資料種別
- departmental bulletin paper
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- データソース種別
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- IRDB
- CiNii Articles