Do for Others(他者への貢献):黄金律および利他主義の系譜と精神構造について

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タイトル別名
  • Do for Others(タシャ エ ノ コウケン) : オウゴン リツ オヨビ リタ シュギ ノ ケイフ ト セイシン コウゾウ ニ ツイテ
  • Do for Others: The Historical Development and Mental Structure of the Golden Rule and Altruism

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抄録

「自分にしてもらいたくないことは人に対してするな」(禁止型)あるいは「自分にしてもらいたいように人に対してせよ」(積極型)という格言がある。これは,洋の東西を問わず古くから知られた倫理命題であり,一般に黄金律(Golden Rule)と称されている。 本稿の前半では,その生成と発展の歴史を簡単にたどるとともに,この格言の意義を考察した。その結果(1)禁止型を積極型へ明確に変更したのはキリスト教の聖書である,(2)黄金律は宗教や文化を超えて道徳の基礎となっているので普遍性があり,またそれは相互性,論理整合性,人間の平等性といった重要な原則も主張している,一方(3)自分と相手の価値観に差異がある場合にはそのルールの適用に留意が必要である,などを主張した。本稿後半では,黄金律よりも視野を拡大し,世界中の多くの宗教や文化に共通する規範になっている利他主義(他人の幸せに関心を払う主義ないしそのための行動)を取り上げた。そして,利他主義の動機をどう理解すべきかについて,多様な分野(社会科学,生物学,神経科学等)の研究や実験結果を展望することによって多面的に考察した。その結果(1)人間は利己主義的動機に基いて利他的行動を示す場合もある一方,他人の利益だけを考慮して行動するケースも確かにあること,(2)利他主義(与えること)は与える人の健康と幸福にとって良い効果を持つこと,(3)この(2)のことが利他主義の普遍性を支える一つの要因になっている可能性があること,などを述べた。

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