長期生存頭蓋内胚腫の機能予後を低下させる要因 (単施設における頭蓋内胚腫の長期予後)

書誌事項

タイトル別名
  • チョウキ セイゾン ズガイ ナイハイシュ ノ キノウ ヨゴ オ テイカ サセル ヨウイン(タンシセツ ニ オケル ズガイ ナイハイシュ ノ チョウキ ヨゴ)
  • Factors Aggravating Functional Outcomes in Long-term Survivors with Intracranial Germinoma (Long-term Outcome in Patients with Intracranial Germinoma in a Single Institution)

この論文をさがす

抄録

【目的】頭蓋内胚腫の初期治療法は, 化学療法を併用した全脳室照射が主流になりつつあるが, 当施設では全脳もしくは全脳脊髄への予防照射を加えた照射単独治療を基本方針としてきた. 本研究では, 当施設で初期治療を行った胚腫の治療成績と機能予後を分析し, 長期生存例における問題点を検討することを目的とした. 【方法】1990年から2009年までに初期治療を行った46名を対象とした. 男性35名, 女性11名で年齢は5歳から43歳であり, 病変部位は限局型30名 (65%), 多発型16名 (35%) であった. 38名 (83%) に対し照射単独治療 (全脳脊髄照射32名, 全脳照射6名), 7名 (15%) に対し化学療法併用放射線治療, 1名 (2%) に化学療法単独治療を行った. 平均照射線量は全脳26.9Gy, 全脊髄26.6Gy, 腫瘍49.8Gyであった. 治療成績と機能予後の評価に加え, Karnofsky performance scale (KPS) スコアの悪化する要因を12歳以下と13歳以上の2群に分けて検討し, 統計解析を行った. 【結果】追跡期間は中央値125ヶ月であり, 46名中2名 (4%) で再発したが, 照射単独治療を行った38名には再発を認めなかった. また4名 (8%) が死亡したが, 腫瘍死は認めなかった. 大学進学率12%, 婚姻率15%, 就職率56%であった. 初期治療終了時KPSスコア70以下の症例は, 12歳以下には存在せず, 13歳以上に8名いた. それらの症例は, 治療終了時からの高次脳機能障害 (p <0.001), 手術合併症 (p =0.048), 神経症状の残存 (p =0.034), すなわち腫瘍による正常脳の障害と手術合併症に関連して有意にKPSスコアが低下していた. また経時的にKPSスコアが悪化した症例は, 12歳以下に4名存在し, 遅発性の高次脳機能障害が関連しており (p =0.007), 13歳以上では2名存在し, 治療終了時からの高次脳機能障害 (p =0.046) が有意に関与していた. 【結論】胚腫に対する照射単独治療は長期的に再発を認めず, 治癒が望める有効な治療法と考えられた. 患者の機能予後を低下させる要因として腫瘍による正常脳の障害や手術合併症が挙げられた. また放射線照射は青年期以降の発症例では, 重篤な晩期障害をきたす問題とはならなかったが, 小児期発症例では高次脳機能の低下をきたす危険性があり, 年齢や病変の広がりに応じた治療法を検討する必要がある.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ