当院における超音波内視鏡下穿刺吸引法の実際

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  • トウ イン ニ オケル チョウオンパ ナイシキョウ カ センシ キュウインホウ ノ ジッサイ
  • The Actual Situation of the Endoscopic Ultrasonography-guided Fine Needle Aspiration in our Hospital

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抄録

超音波内視鏡下吸引法(EUS-FNA)は消化器疾患の精密診断法として近年急速に普及してきた. 本邦では2010年4月の保険収載を機に, それまで検体採取が困難であった病変に対する術前診断が可能となり, さらに治療分野への応用が始まるなど, 臨床的な重要性はますます増加している. EUS-FNAの対象病変は膵腫瘤, 消化管粘膜下腫瘤, 縦隔・腹腔内リンパ節病変など多岐に及ぶ. 確実な病理診断に至るためには病変部位から的確に十分量の検体採取が行われることが重要である. On-site迅速細胞診は, 確実な検体採取と迅速かつ正確な診断に有効で, 診断能向上には必要とされる. 当院では, 2002年からEUS-FNA施行に際し, on-site迅速細胞診を行ってきた. 対象は2001~2013年に当院消化器内科で試行された膵腫瘤59例, 消化管粘膜下腫瘍61例, 胸水・腹水7例, 縦隔・腹腔内リンパ節28例, その他11例の計166例である. 細胞診判定と組織診断が対比できた症例で良悪性一致率をみると, 膵腫瘤88%, 消化管粘膜下腫瘍91.1%, 縦隔・腹腔内リンパ節88.5%, その他腫瘤100%であった. 術前に採取が困難な微量な胸水・腹水も対象となったが, 癌細胞の有無が明瞭に判定でき, いずれの症例もその後の治療へ貢献できた. 一般的に迅速細胞診では, Diff-Quick染色, 迅速Papanicolaou染色が用いられるが, 当院では迅速HE染色で実施し, 臨床医とディスカッションをすることにより, 検体採取率及び診断率の向上を図ってきた. 検体採取量が不十分な理由で診断に至らなかった症例は11/161例であったが, そのほとんどはon-site迅速細胞診開始当初の症例であった. 迅速細胞診HE標本はその後作製される通常の細胞診Papanicolau染色標本, 組織HE標本と細胞所見, 組織構築においてよく対応しており, 臨床医-細胞検査士-病理医をつなぐ最も適した染色法であり, 迅速かつ確実な最終病理診断のための有効な手段であると考える.

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