樹木葬会員の意識からみた樹木葬墓地の今後の課題

書誌事項

タイトル別名
  • ジュモクソウ カイイン ノ イシキ カラ ミタ ジュモクソウ ボチ ノ コンゴ ノ カダイ
  • Future Issues of Afforested Burial Grounds as Perceived by the Afforested Burial Membership

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抄録

近年、自然葬に注目が集まっている中、里山保全を目的とする樹木葬墓地を選ぶ人はどういった人で、里山保全の認識度及び地域経済への貢献度を明らかにするためアンケート調査を実施した。アンケートの対象は千葉県いすみ市大原に所在する天徳寺の樹木葬の会員である。アンケート結果で属性をまとめると、女性が6割以上で、60歳代が多い。世帯構成では夫婦のみの世帯が多く、男女別でみると男性は夫婦のみの世帯が、女性は単独世帯が多かった。また子どもがいるかどうかに関わらず子どもと同居していない会員が多いことが分かった。居住地は千葉県が6割以上であった。職業は男性の場合は無職が、女性の場合は主婦の割合が高かった。次に樹木葬に対する意識をまとめると、樹木葬を選んだ理由としては「自然に還りたい」が最も多く選択された。価格に関しては安いという評価が多く、樹木葬墓地を購入したことに関しては8割以上の会員が満足していた。購入後に良かったとおもうところは里山保全や再生に貢献できるが最も多く選択された。逆に樹木葬を購入後に不便・不安なところに関しては、「不便・不安なところはない」という答えが一番多かった。樹木葬墓地への訪問は年に1〜2回が一番多い。樹木葬会員の集いの参加率は5割弱で、参加者は会員同士で交流が出来るところを集いの参加理由として一番多く選択している。次に樹木と魂の関係について「樹木に魂が宿ると信じたい」と「宿ると思わない」が半々であった。最後に里山保全と地域経済への影響に関しての意識をまとめると樹木葬墓地が里山保全に貢献できるとの意見が7割強であった。貢献できると思う理由としては「墓地として里山を利用・整備できるから」という意見が5割以上であった。天徳寺での米の購入に関しては購入したことがある会員が5割以上を占めた。米の購入の理由に関しては地域の農業活性化へ貢献できるとの回答が7割以上を占めた。天徳寺への1回の訪問あたりの支出費は1万円未満が5割以上を占め、インパクトは限られる。樹木葬の選択の理由からみると里山保全という樹木葬の趣旨は賛同しているものの、最初は、自然回帰と継承の問題が樹木葬墓地を希望することに多く働いているといえる。しかし樹木葬を購入してよかったところに関する問いでわかるように樹木葬会員も樹木葬墓地を選択した後は自然回帰と継承の問題が解決されたため里山保全や地域活性化への貢献、また自然とのふれあいの楽しさのほうが大きくなり、樹木葬墓地の運営・経営側の目的と一致していくと考えられる。里山保全のための持続的な管理はこれに参加する理解者を増やすことが重要であり、以上のことから樹木葬の会員は十分里山保全の理解者であるといえる。ただ、樹木葬墓地への年間の訪問数や集いへの参加率は低く、樹木葬墓地の運営・経営側の樹木葬会員に対する里山保全に関する教育や地域との関わりの場の提供を増やすなど積極的なアピールが課題であり、長期的かつ計画的に管理を行ってこそ将来的に里山保全につながるといえる。樹木葬墓地を含めもっと地域に来てもらうためには会員が地域に求めているものが何かを把握することや地域全体との連携が必要であろう。

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