幼児期の欲求場面における身体表現による母子間のコミュニケーション

書誌事項

タイトル別名
  • ヨウジキ ノ ヨッキュウ バメン ニ オケル シンタイ ヒョウゲン ニ ヨル ボシ カン ノ コミュニケーション
  • Mother's ability to understand their children's non-verbal communication about their desires

この論文をさがす

説明

言葉によるコミュニケーションが未発達な幼児期に、子どもとコミュニケーションがうまくとれず、悩む母親が多い。母親は子どものノンバーバルな表現からもその欲求や思いを理解していくことが必要である。本研究は母親が子どもの発する日常のノンバーバルな表現をどのように理解しているのか明らかにすることを研究目的とした。母親92名へアンケート調査を実施し、子どもの欲求場面である「空腹」「睡眠」「排尿」「排便」「遊び」において、子どもがどのように訴えるか具体的に尋ねた。はじめに月齢による身体表現と言葉によるコミュニケーションの発達の諸相をつかみ、次に母親の全記述554件を動きの分析に優れたラバン理論の視点を援用した5つのカテゴリー「身体部位」「動作」「ダイナミクス」「空間性」「関係」に「言葉」「特になし」を加えて7カテゴリーに分類し、欲求場面での母親が理解する子どもの表現の特徴や傾向を検討した。その結果、動きによる表現を経て言葉での表現への発達には3つのパターンがあり、「空腹」「遊び」は急速に言葉による表現へ発達していくのに対し、「睡眠」は言葉への発達が鈍く、「排便」「排尿」は遅れるという発達の順序性が見られた。また各欲求場面に応じて子どもの表現に一定の傾向や特徴が認められた。「空腹」では象徴的身振りや実際に食べ物のある「空間」への移動、「睡眠」では「目をこする」「寝る」「暴れる」などが特徴であった。「排尿」は言葉による訴えを主とし、動きからの感じ取りが少ない傾向であった。「排便」は「隠れる」ことが特徴であり、「遊び」は直示的身振りの他、「手を引っぱる」「物を持ってくる」など、直接母親への身体接触を伴って訴えてくることが多い。つまり、子どもが該当の「身体部位」に触れる、特徴的な「動作」をする、欲求するものがある「空間」へ移動する、「関係」を求めることは、母親にとって、とても理解しやすい子どものノンバーバルな表現であった。一方、動きの時間性や力性から生まれる表現的な質「ダイナミクス」に関する記述は非常に少なく、子どもの動きの様子から感じ取ることがあまり行われていないのではないかと推測された。

Kita(1997) shows that children's communication developes from virtually nothing at birth to verbal communication, with intermediary stages of non-verbal expression combined with verbal expression.However, if a parent cannot understand what a child's actions mean, the communication attempt fails. This study suggests that parents do not understand a significant amount of their children's non-verbal communication.92 mothers were surveyed about their 4 month-34 month old children regarding the children's behavior when they desire to eat, sleep, urinate, defecate, and play. Their descriptions were classified into 7 categories(body parts, action, dynamics, space, relationship, verbal, no-expression) which were adopted from Laban theory. Results for the mothers' ability to recognize children's desire to eat [action(25.0%) space(10.3%)], sleep[body parts(21.6%) action(40.3%) relationship(14.2%)], urinate[body parts(15.6%)], deficale [action(19.6%) space(13.3%)],and play[relationship(33.3%) action(22.2%)] were found significant. In all categories, mothers were not able to understand their children's desires by dynamics.It was found that children can easily communicate with their mothers by doing things such as touching their bodies, pointing at things they want, or bringing something to their mother. However, especially in case of urination and defecation, mothers depend on verbal communication.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ