台湾華語の句頭における「啊(ah)」について

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タイトル別名
  • A Study on the ‘ah’ in Taiwanese Mandarin
  • タイワン カゴ ノ クトウ ニ オケル 「 ア(ah)」 ニ ツイテ

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抄録

本稿は,台湾華語の句頭に出現する「啊」を扱い,関連の先行研究からこの「啊」が台湾で使われる理由を整理することを目的とする。句頭とは,発話の最初あるいはフレーズの最初の位置のことを指す。この台湾華語で句頭に「啊」と表記されるものの中には,感嘆詞の用例のみでは解釈しがたいもの,すなわち規範的とされる用法から逸脱するものが存在する。その発音は多く[aʔ](-ah)と発音されること,ならびに台湾という地域における言語環境の歴史的な経緯から閩南語の影響を受けたものと推測し,閩南語の「啊」に関する先行研究を整理した。その結果,先行研究では閩南方言を母語のひとつとする地域において使われる標準中国語を「地方普通話」として部類した上で,それは規範的とされる中国語の習得途中で形成された一種の中間言語であると見做す。つまり,本稿で扱った台湾華語における句頭語気助詞「啊」を含む方言要素は,基本的に転移の結果であることが先行研究からの大まかな見解であった。一方で行政院主計総処(2010)の統計を前提として,台湾人口の約8 割にあたる人が家庭内で閩南語,あるいは閩南語ともうひとつの言語として台湾華語を使っていることを考慮すると,一概に習得途中において形成された一種の中間言語として台湾華語を位置づけ,その中で句頭語気助詞「啊」を単なる転移の結果とするのは,今後も引続き議論が必要であることを本稿は指摘した。

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