海洋中国のメインプレーヤー・閩南人の千年史 ―台湾「族群」を知るための一考察

書誌事項

タイトル別名
  • The Millennium History of Maritime China’s Main Player, Minnan people : A Consideration for Knowing the Taiwan “Ethnic Groups”
  • カイヨウ チュウゴク ノ メインプレーヤー ・ビンミナミジン ノ センネンシ : タイワン 「 ゾクグン 」 オ シル タメ ノ イチ コウサツ

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抄録

近年,東アジアの歴史を,海洋の視点から捉えようとする研究が注目を集めている。従来,大陸(領土)中心に説かれてきた「国家」の歴史に,貿易中心の「港市」の歴史を重ね合わせ,世界史を人,物,金のダイナミックな流れに沿って見直す動きである。 東アジアの海洋は,漢代から始まったといわれる中国沿岸と東南アジアを結ぶ交易ルート,8~13世紀イスラーム商人によって構築された一大交易ネットワーク,11~17世紀漢族海商,海盗・倭寇の活動と,16~19世紀ヨーロッパのアジア植民の隆盛にいたるほぼ2000年の間,多数の民族と雑多な集団が興亡する世界であった。その後半史1000年において常にメインプレーヤーであり続けたのは,南中国沿岸の福建及び広東の漢族,中でも閩南人と客家人であった。言うまでもなく彼らは,現在台湾の人口を構成する四大族群(エスニックグループ)の二つ,合わせれば8割以上を占める最大多数のグループである。 1980年代後半以降,台湾では,民主化の波の中で全住民の融合,統一を目指す「台湾人アイデンティティ」の確立が叫ばれると同時に,それと矛盾するような族群同士の対立や多様化の主張も生まれている。いずれも複雑な政治的背景を持つが,それが単に,遥か昔どこからやって来たのかという同郷人の意識に止まるのであれば,その対立も多様性も,無意味であり,生産的でない。閩南人,客家人,或いは外省人,原住民のたどった歴史とそこから形成されたそれぞれの特性(又は民族性)にまで遡り,それを海洋世界に結び付けることによって,新たな台湾史が浮かび上がるのではないか。本ノートでは,その最初の試みとして閩南人の歴史を取り上げた。

収録刊行物

  • 拓殖大学台湾研究

    拓殖大学台湾研究 4 109-139, 2020-03-25

    拓殖大学海外事情研究所附属台湾研究センター

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