大手製紙会社会長の職務犯罪─大手製紙会社のイデオロギーと犯罪─

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本稿では,大手製紙会社会長の職務犯罪を考察する。職務犯罪とは,合法的な職業についている人物が,個人的な利益を目的としてその職業上犯す犯罪である。本稿では,大手製紙会社会長(以下,会長A とする)の特別背任の事件を事例として取り上げる。その際に,大手製紙会社のイデオロギーに注目する。本稿の目的は,会長A の職務犯罪と正当化,大手製紙会社のイデオロギーとの関連の考察である。本稿では,新聞や他の研究者等が著した文献を資料として用いる。考察の結果,次のことが明らかになった。会長Aの犯行は,「ツキがあれば何とかなると思っていた」という会長A の身勝手な正当化によって促進された。この身勝手な正当化は,ワンマン主義という大手製紙会社のイデオロギーをよりどころとしていた。また,ワンマン主義は,連結子会社から会長A への安易な融資をもたらした。さらに,ワンマン主義によって効果的な監視人が欠如し,会長A の行った犯行の露見が困難となった。ここに,会長A の犯行の機会が存在した。ワンマン主義は,創業家による大手製紙会社の支配という大手製紙会社の実在条件によってもたらされた。また,ワンマン主義には,会長A が独善的に振る舞おうとする強い意志がみられた。

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