「感覚」を描く -小川洋子「妊娠カレンダー」論-

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  • 「 カンカク 」 オ エガク : オガワ ヨウコ 「 ニンシン カレンダー 」 ロン

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抄録

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はじめに「妊娠カレンダー」の初出は一九九〇(平成二)年九月の『文芸春秋』であり、一九九一(平成三)年に、芥川賞を受賞している。二〇代の女性では戦後初の芥川賞受賞者として、話題を呼んだことで知られている。芥川賞選評では概ね好評であり、女性の身体の感覚の描写や、食の描写が評価された。また、末尾の妹の悪意について、吉行淳之介氏が「末尾で困った。」や丸谷才一氏が「末尾で落胆した」などと言及したため、その悪意の明確さや有無に関しては、後の先行研究で多く述べられるきっかけになった。また、「この作品が世に出た当時、主人公とほぼ同年代の女子大生だった筆者の周囲には「この感覚、わかる」と主張する者が多数いた。」と神田法子氏が「特集*小川洋子 全著作解題」で語るように、発表当時の反応としては、「わたし」の感覚に共感する女性が多くいたことがわかる。つまり、芥川賞選評では、同時代の上の世代の選評員に理解されなかった「わたし」の感覚は、同世代には理解されているのだ。また、男女で理解がわかれていることにも着目したい。

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