ソフトボール・ウインドミル投法におけるライズボールの投げ方 : 手・指のキネマティクス

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タイトル別名
  • How to throw a rise ball using a windmill pitch in fastpitch softball : kinematics of the hand and fingers of the pitching arm
  • ソフトボール ・ ウインドミルトウホウ ニ オケル ライズボール ノ ナゲ カタ : テ ・ ユビ ノ キネマティクス

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抄録

本研究の目的は,ファーストピッチソフトボールでのウインドミル投法を用いたライズボールの投球で,投球腕の手関節のスナップを運動学によって分析し,そのスナップがもたらされる仕組みとライズボールの下回転角速度が増加する仕組みを調べることであった。大学でファーストピッチソフトボールを行っている5名の男子投手がこの研究に参加した。各被験者は実験室で20球のライズボールの投球をした。彼らが投球する際の身体とボールの動きがモーションキャプチャーシステムを用いて8台の高速度カメラで毎秒500コマで撮影され,投球腕の前腕,手,指とボールの運動がそれらに付けられたマーカーを用いて運動学により分析された。前腕による腰の外側部のブラッシングが行われている間に,ボールの下回転速度の増加とともに全ての被験者の手関節掌屈角速度が急増し始めた。ブラッシング開始から最大手関節掌屈角速度が出現するまでの時間の平均値は被験者全員について最長でも0.014秒であった。その際の各被験者の最大手関節掌屈角速度の平均値は,ヒトの手関節周りの筋のみで随意的に生み出される最大手関節掌屈角速度の平均値(Jessop, D M and Pain, M T G, 2016, p. 41)より有意に大きかった。4名の各値はその平均値の少なくとも1.5倍を超えており,残り1名の値はその平均値を超えていた。また,ブラッシング開始から最も長くて0.016秒で分析された全ての被験者の投球でのボールの下回転角速度の最大値が出現した。野球の投球では,投球腕の前腕の運動由来で前腕から手に作用する合力が投球の最終的な局面で手とボールの機械的エネルギーを増加させるのを助長する(Miyanishi et al., 1997, pp. 59–63)。この際,手関節の背屈角度がπ/2 radの範囲まではその角度が大きいほど手の回転に由来する手とボールの機械的エネルギーの増加の割合も大きい(阿江,2004,p. 439,式(38))。本研究で被験者がブラッシング開始時に示したその角度の平均値は,野球の投球の最終局面での最大値(Barrentine et al., 1998, p. 30;Sakurai et al., 1993, p. 62;Solomito et al., 2014, p. 324)の最大でも約1/3であった。3名の被験者で,ボールの下回転角速度が最大になった時の中指の指先速度はブラッシング開始時の同速度より有意に大きかった。随意的な運動では筋に達する神経刺激は漸増的で,また神経刺激を受けた筋も十分に活動するためには一定の時間が必要であり,ブラッシング開始時の手関節の背屈角度が野球の投球の最終局面でのその最大値より小さかった。これらのことを考慮すると,以上の結果は,ライズボールを投げる際の手関節のスナップは手関節を跨ぐ筋を用いての随意的な手関節の運動によってではなく,ブラッシングの際に前腕に作用した衝撃力によって主にもたらされていること,及び先の3名の被験者について,ブラッシング開始後のボールの下回転角速度の増加はブラッシングによって生じたスナップが中指の指先速度を増加させたことに由来していることを示唆している。

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