ハエ類の生態学的研究 : 5. 数種小動物屍からのハエ類の発生量について

書誌事項

タイトル別名
  • ハエルイ ノ セイタイガクテキ ケンキュウ 5
  • Ecological Studies of Flies V. On the amount of the flies breeding out from several kinds of small dead animals.

この論文をさがす

抄録

1) 1958年5月下旬(実験I)と10月下旬(実験II)に夫々1回ずつ,魚,カエル,ヘビ,ヒナ及びネズミの5種の小動物屍夫々10頭を研究所中庭の木蔭でハエに曝し,これらから発生するハエ類の発生量とその群集構造を比較することによつて,これらの小動物屍のハエ類発生源としての価値を比較した.2) 5種の動物屍からのハエの発生量は動物屍の種類によつて有意的に異なり,ネズミが最多数のハエを発生させ,魚がこれに次ぎ,ヘビ,ヒナ及びカエルの順に少なくなる.その原因は,ネズミ,魚,ヘビ及びカエルではハエ成虫の産卵数の多寡にあると思われるが,ヒナの場合に発生数が案外に少ないのは産卵数が肉の量に対して多すぎるため,発育中に餓死する幼虫が続出することの多いことによるものと思われる.3)各小動物屍から発生するハエ群集の構造をみると,ネズミ,魚,ヘビ及びヒナでは極めて近似しているが,カエルの場合には前4者で優占種であるミドリキンバエが少なくなり,逆に前者で比較的少ないヒロズキンバエがかなりの比率を占めて稍特異的な群集構造を示す.4)以上,ネズミ,魚,ヘビ及びヒナからの各種ハエ類の発生量は夫々比例的に少なくなつていて,群集構造の相違と関係した減少の仕方はみられない.即ち各種ハエ類にとつてはこれらの動物の利用価値は夫々比例的に減少していることがわかる.カエルの場合にはミドリキンバエの利用度が比率においてはかなりに減少し,逆にヒロズキンバエの利用度が高くなつている点などで前4者での場合とは稍々趣を異にしているが,各種ハエ類の絶対数は共に著しく低いことによつてその利用価値が最下位となつている.

To examine how much and what kind of flies are capable of breeding out from carcasses of different kind of small animals, experiments were projected as under: Fifty fresh carcasses consisting of each ten heads of five kinds of small animals shown in Table

長崎大学風土病紀要 1(4), p.407-413, 1959

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ