日本産ボラ科魚類の研究―2 : 鹿児島県秋目および熊本県牛深で春季に獲れる未熟成魚ボラ群の生態とその漁業

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タイトル別名
  • ニホンサン ボラカギョルイ ノ ケンキュウ 2
  • Studies on the Muglid Fishes of Japan―II Ecology and Fishery of the Unripe Adult Fish of Grey Mullet, Mugil cephalus caught at Akime, Kagoshima Pref. and Ushibuka, Kumamoto Pref. in Spring

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抄録

The shoals of unripe adult fish of grey mullet, Mugil cephalus came to coastal waters of Western Kyushu in Spring. The mullet, 31 to 43cm in length, had been caught with boat lift nets at Akime and with a stake net at Ushibuka. This paper deals with the ecology of the mullet and its fishery.

九州西方海域では春秋二季にボラ成魚群の沿岸来游がみられ,それぞれ春ボラおよび秋ボラと呼ばれているが,前者は未熟成魚群であり,後者は成熟成魚群である.鹿児島県秋目および熊本県牛深では春ボラを主として漁獲するボラ漁業が行われている. 秋目では4統のボラ敷網が操業し,1958~1962年の5ケ年間には毎年計10,000kg以上の春ボラを漁獲している.漁期は3~4月の2ケ月間であり,盛漁期は3月下旬から4月旬上までの問である,漁獲物の体長は31~43cmであり,ボラ群が岸沿いに北上してくるのを予め漁場に敷いてある敷網で漁獲する.網は68×62mのほぼ正方形のものであり,漁船は6艘,漁夫は22名,魚見役1名で操業する.漁場は岸沿いの水深10~20mの所で,底質は岩場ないしは小石である. 牛深ではボラ定置網1統が操業している.春ボラの漁期は3月10日から5月中旬までの約2ケ月間であり,盛漁期は4月上,中旬であり,これは秋目の盛漁期より遅れている.盛漁期には連日のようにボラ群が来游し,1日に200~500kgの漁獲がある. この網は愛媛県の漁法を導入したものであり,漁船4艘,漁夫11名,魚見役1名,計12名で操業しており,網の大きさは間口60m,奥行80m,魚どり部10mの大敷網形式の網であり,浮子上にボラの跳躍逸逃を防ぐために囲い網を張りめぐらしている.漁場は岸沿いの所で水深3~15m,底質は岩場である. 九州西岸の秋ボラおよびその起源については,筆者は各地の内湾で索餌,成長したボラ成魚が秋になって九州南方海域で産卵するたこめに外海に出て南下する途中で互に集って群をなしたものであり,また春ボラおよびその消滅については九州南方海域の産卵場で産卵,越冬したボラ成魚群およびその他が北上途中のものであり,それが各地の内湾に立寄ってそこで分散,滞留するためにしだいに群が消滅してゆくと考えているが,春ボラと秋ボラとの相互関係についてはなお不明であり,今後これらの点については各地の内湾で行われている各種のボラ漁業調査および標識放流法によって研究を進める必要がある. 春ボラの来游盛期にあたる4月上旬の九州西海域の表面水温は15~19℃であり,これを秋ボラの未游盛期である10月下旬の水温23~24℃と比べると5~8℃低い.

長崎大学水産学部研究報告, v.15, pp.17-23; 1963

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