解離の時間性に関する一考察 : 現象学的時間論とナラティヴ的時間論をもとに

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タイトル別名
  • A Study on the Concept of Time in Clients with Dissociation : Based on the Phenomenological Theory of Time and the Narrative Theory of Time
  • カイリ ノ ジカンセイ ニ カンスル イチ コウサツ : ゲンショウガクテキ ジカンロン ト ナラティヴテキ ジカンロン オ モト ニ

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抄録

本論文は、時間体験の異常が生じうる解離症状を取り上げ、従来の理解の枠組みとして木村(1982)、野間(2012a;2012b)の現象学的時間論を概観した上で、野村(2010;2012)のナラティヴの認識枠組みに基づく時間論(以下、ナラティヴ的時間論)を導入するための試論を行った。まず、クライエント個人に焦点をあてた現象学的時間論において、時間の本質は “自己存在の意味方向” であり、解離症状の一つである離隔は “自己存在の身体性・生命性からの離反” の事態であること、さらに、そのような存在構造の場合、空虚な「瞬間の継起」(野間,2012b)として時間が体験されることを整理した。 次に、クライエントとセラピストとの双方向性に焦点をあてたナラティヴ的時間論においては、時間とは “時間についての語り” であり「区切り(punctuation)」(野村・橋元・明石,2015)であること、それはA系列、B 系列、C 系列、 E 系列の4種類が多層的に織り合わさっていることを指摘した。その上で、解離症状の一つであるフラッシュバックは “ C系列における他系列の圧倒” として理解でき、クライエントは “異常な状態にある” のではなく、“何らかのメッセージを発している” に過ぎず、そのメッセージの意味を今・ここから協働生成していくという立体的、動的な姿勢がナラティヴ的時間論の特徴であることを考察した。

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