組織再編税制の残された課題:キャッシュマージャー、混合対価、三角合併

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タイトル別名
  • Remaining Tasks for Reorganization Tax Law: Cash Mergers, Mixed Considerations and Triangular Mergers

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抄録

・ 現行の日本の組織再編税制には、経済活動に中立的でなく無用のフリクションを課している部分が残っている。このうち、スピンオフについては、平成29年度税制改正により概ね対処されたが、本稿では、残された課題である、キャッシュマージャー、混合対価の解禁および三角合併制度の改善について考察したい。・ 上場企業を現金対価で100%買収する場合、現在の日本では、「公開買付け+スクイーズアウト」という2段階方式が可能であるが、米国では逆三角現金合併による1段階方式(キャッシュマージャー)も認められている。1段階方式は、特に独禁・許認可等の理由で買収期間が長期化する場合の早期のリスク遮断に優れており、日本企業による米国上場企業買収においても広く用いられている。・ しかし、日本の税制ではキャッシュマージャーは税制非適格となり企業課税が発生することから、現実には実施困難である。日本でも、買収対象企業の法人格が存続し資産・負債が区分され続ける非適格株式交換においては、株主課税はあるが企業課税のない平成18年度税制改正以前の姿に戻し、キャッシュマージャーを解禁すべきである。・ 上場企業の買収時に、買収対価の種類(現金、株式)は、買収後の資本構成や1株当たり利益、デット格付けに大きな影響を与えるが、100%株式対価、100%現金対価の中間に最適解が存在することも十分にあり得る。ここに、混合対価を認める必要性が発生する。混合対価解禁のポイントはキャッシュマージャー同様、企業課税の回避であり、まずは非適格株式交換における企業課税を撤廃することが望まれる。・ 日本の三角合併制度は、米国の逆三角合併制度(外資も使用可能)を模して導入された株式交換制度が国内法人しか利用できないという欠陥を有していたため、改めて創設されたものと見ることができる。しかし、日本型三角合併は「非常に使い勝手を悪くした株式交換」制度となっている。現行制度は形式的には内外無差別だが、日本企業のみが株式交換を利用できる以上、実質的には外国企業に対して差別的な法制となっており、対日直接投資を促進する立場とは相容れないものである。真の内外無差別実現のためには、法制上・税制上の扱いを株式交換と実質的にイコールフッティングとすべきであろう。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1050287540571514240
  • NII論文ID
    120006809305
  • NII書誌ID
    AA1285312X
  • HANDLE
    10086/31009
  • 本文言語コード
    ja
  • 資料種別
    journal article
  • データソース種別
    • IRDB
    • CiNii Articles

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